「黄瀬くんってかっこいいよねえ」
「背も高いし!」
「バスケもうまいし!」

海常高校では至る所でこんな会話が織りなされる。
そして、私には決まってこんな言葉が掛けられる。

さんってすごいよね、あの黄瀬くんと付き合ってるなんて」

そう言われると、私は適当に「そうかな?」なんて誤魔化している。

私にとっては、「黄瀬と」付き合えたことではなく、「好きな人と」付き合えたことがすごいことなんだけど。


「黄瀬ってかっこいいよねえ」

いつもの聞いてるだけの会話を直接黄瀬に言ってみると、黄瀬は面食らった顔をした。


「え、いきなりどうしたんスか」
「背も高いしバスケもうまいし」
「ちょ、なにいきなり褒め殺し?」

普段あまりこういうことを言わないので、黄瀬は意味が分からないと言わんばかりにきょろきょろし始めた。

「モデルやってるしバスケ部のエースだし、あんたってすごいやつなんだよね。なぜか全然そんな気しないけど」
「え、今度は上げて落とすの?ひどくない?」
「だってみんな言うんだもん。『黄瀬くんってすごいよね』って。私にとってみれば黄瀬と他の人って変わらないんだけど 」
「ええええ!?オレのこと好きじゃないの!!?」
「黄瀬うるさい」

黄瀬はさらにショックを受けたような顔で私の肩を掴んだ。
それを振り払いつつ、私は言葉を続ける。

「私はさ、別にあんたがかっこいいから好きになったわけでも、背が高いから好きになったわけでも、
 バスケがうまいから好きになったわけでもないのに、そういうこと言われるのってなんか嫌」

私が黄瀬を好きになったのは、黄瀬が普通の男の子だったから、黄瀬が黄瀬だから。
自分の恋人を褒められるのは嬉しい。
だけど、私が黄瀬の上っ面だけを見て付き合ってるようなふうに言われるのはもやもやする。

黄瀬はさっきまでの悲しそうな顔から一変して満面の笑みとなった。

「オレも、だから大好きっス!!」
「はい、ありがとう」
「反応が冷たい!でもそんなとこも全部好き!」

うるさいなあ、なんて思いながら黄瀬の痛いくらいの抱擁を受け入れる。
こうやってバカみたいに騒いだりしてるのを見ると、ああ普通の男の子だなって思う。
そんなところが好きなのよ。
















モモの花言葉
120513


花言葉=私はあなたの虜です
設定だけ見るとすごいハイスペックなのにそれを感じさせない黄瀬が好きです





配布元→capriccio