「今度いつ会えるの?」 玄関で靴を履くユキにそう聞いてみた。 「知らねーよ」ユキは私のほうをちらりとも見ずにそう言った。いつも同じことを聞いては同じ答えを返される。 懲りずに聞く私も私だけど、毎回同じように答えるユキもすごいなあと思う。 いつも声のトーンも言い方も同じで、ユキには”がこう聞くとこう返す”っていう機械でも組み込まれてるんじゃないだろうかと思うくらい。 冷たい声と、抑揚のない言い方。次に、いつ私に会えるかなんてどうでもいいと思わせるような声。 こうやって別れるたびに切なくなる私とは大違いだ。 「じゃあな」 ユキがドアノブに手を掛ける。また、行っちゃう。 きっと帰ったら私のことなんか忘れてしまう。そんなの、何だか、 「ユキ、」 寂しいじゃない、と思うより先に体が動いた。ユキの腕を掴んで離せない。 少しびっくりした顔でユキが私を見る。 ほんのちょっと背伸びをして、私はユキにキスをした。いつもと違って、触れるだけのキス。 「バイバイ」 掴んでた腕を離してユキが外へ行くのを見送った。 私のことは忘れても、キスだけは忘れないでくれるかな、と期待を込めて。 キスだけ覚えてて 07.10.10 私が書くユキはヒロインが報われないのばっかで申し訳ないです。 タイトル配布元→capriccio |