放課後の教室、目の前にはぐずった男が一人。

「…男のくせにいつまでも泣いてんじゃないわよ」
「男も女も関係あらへん!泣きたいときは泣くんや…!」

私が貸したハンカチで涙と鼻水を拭いながら謙也は小一時間ほど泣き散らしている(もうあのハンカチいらない)。
先に言っとくけど私が泣かしたわけではない。謙也が彼女にフラれたのだ。
こいつが女の子にフラれるたびに、私はこうやって話を聞いてあげてる。

「女にフラれたぐらいでそんな…」
「ぐらいとは何や!大問題やで!」

ゆっこちゃん…とフラれた彼女の名前を呟きながら謙也は机に突っ伏した。
謙也はその”ゆっこちゃん”という子とちょうど一ヶ月間付き合っていた。
ちょうど一ヶ月前に謙也がウキウキ顔で報告しに来たのでよく覚えてる。
あのときは本当にうざかっ…じゃなくて、本当に嬉しそうな顔だったのに、たった一ヶ月でこんな見るも無残な顔になって…。

「…何かめっちゃ失礼なこと考えてへん?」
「いや、何も?こんな素直な可愛い私が失礼なこと考えると思う?」
「…誰が可愛いって?」
「私」

そう言うと謙也ははぁ…と諦めたように溜め息をついた。

「あ、俺そろそろ部活行かな…」
「ああ、頑張ってね」
「ハンカチはちゃんと綺麗に洗って…」
「いや、いらない」
「……」
「…いくらなんでも鼻水付いたのはいらない」
「…さよか」

「部活中は泣くなよー!」と言いながら教室を出て行く謙也を見送った。
普通フラれたのを慰めるのって男の役目じゃない?と思いつつさっきまで謙也がいた席を見つめる。
私が謙也の立場が逆で、それでいて漫画だったら、きっと私謙也に惚れてるんだろうなあ。
でも、これじゃ私はヒロインじゃなくてヒーローなので、恋が生まれる気配はしばらくなさそうだ。










自称ヒーロー
(いつか立場逆転するかも!?)

07.10.02




タイトル配布元→capriccio