中間テスト直前、辰也の部屋で勉強中。
最初こそちょっとおしゃべりしたりしたけれど、いつの間にか辰也も私もせっせとテスト範囲の復習に勤しんでいる。

…のはずなんだけど。

「辰也」
「…ん、ああ、何?」
「眠いの?」

ふと、顔を上げると辰也は船を漕いでいた。
隙のない人だから珍しい。声を掛けたら案の定反応は遅かった。

「いや、大丈夫」
「無理して勉強しても身に付かないんじゃない?」
「…それはそうだけど」

辰也は両腕を伸ばして伸びをする。
毎日部活で疲れているんだろう。

「ちょっと寝たら?」
「でも」
「別に慌てて勉強しなきゃいけないような頭じゃないでしょ」

転校直後ならまだしも、頭の回転が速いのか呑み込みが早いのか、今ではしっかりそれなりの成績をとれるようになっている。
寝なさい、と言って氷室の目の前のノートを無理矢理畳んだ。

「今日は厳しいなあ」
「だって眠そうなんだもん。ちゃんと寝なよ」
「んー…が膝枕してくれるなら寝るよ」
「え」

思いがけない言葉が飛んできたので、返事に詰まってしまう。
膝枕って、何をいきなり。

「辰也に膝枕したら、私が勉強できないじゃない」
こそ慌てて勉強しなきゃいけないような頭じゃないだろ」

私の了承を聞く前に、辰也は私の膝に頭を乗せた。

「いいって言ってないんだけど…」
「気持ちいいな…」

人の話、聞いてない。
こうなるともう何を言っても無駄なのを知っている。
はあ、と一つため息をついて、自分のシャーペンを机に置いた。
まあ、寝てくれるならなんでもいいか。

「柔らかい」
「…太ったもん」
「また言ってる。、この間も『太るから間食やめる』とか言ってたけど、痩せちゃダメだよ」
「え、最近本当に体重やばいんだけど」
「抱き心地悪くなるし、膝枕が固くなるし、ダメ」
「…我儘」
「知ってるだろ?」

辰也がそんなふうに言うものだから、辰也と付き合う前、少しでも辰也によく思われたいと必死に落とした体重はあっという間に戻ってしまった。
まあ、それがいいと言ってくれるなら別にいいんだけど…。

「じゃあ、太ったから嫌いになった、とか言わないでね」
「言うわけないだろ」
「絶対だよ」
「うん」
「…どのくらいで起こす?」
「適当でいいよ」
「わかった」

そう答えると、辰也は目を瞑って眠りに落ちていく。
いつも見上げる立場だから、こんなふうに見下ろすのは新鮮だ。

そう思いながら、眠った辰也の前髪を撫でる。
テスト勉強は…まあ、どうにかなるだろう。
私も少し眠いけど、この幸せな時間を眠って過ごしてしまうのもったいないので、もう少し起きていよう。



















飛び切り甘いキスで起こしてね
12.10.16

山も落ちも意味もない ただイチャイチャしてるだけです
最近イチャイチャするだけの話が好きです





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配布元→capriccio