「はあ〜…さむ」 横を歩く敦は、大きな体を縮こませて寒さを耐えようとする。 「なんでオレまで買い出しなの?」 「体育館で練習中にお菓子食べたからでしょ」 私と敦はテーピングや絆創膏など必要な備品の買い出しに出かけている。 普通は私一人で行くけど、さっきの理由で敦は今回荷物持ち。 秋田の寒さに慣れていない敦は、コートだけじゃ足りないようだ。 「ねえ、ちん」 「ん?」 「よくマンガでさあ、男がコートの中に女の子入れるじゃん。あれやりたい」 「…は?」 思わず間抜けな声を出してしまう。 いきなり何言ってるんだこいつ。 「オレとちんだったら絶対ちん見えなくなるよね〜」 「だろうね…。っていうか、やらないからね?」 「えー。なんで?」 「そういうのは普通、恋人同士とかそういう雰囲気の人たちがやるものでしょ」 なんでただの部活仲間の私と敦がそんなことやるんだ。 どう考えても、おかしい。 「じゃあ、オレとちんが恋人同士になればいいじゃん」 「コートに入れるのがやりたいからって恋人になるって、あんたもうちょっと考えたら?」 「えー、考えんのめんどくさい」 「…少しは考えなさい」 「考えなくてもいいでしょ〜。だってちんだからコート入れてみたいって思うんじゃん」 「…は」 私だから。 それは、それって。 「ちん以外入れてみたいとか思わないし〜」 「…敦」 「ん〜?」 「じゃあ、恋人同士になったらっていうのも、私だから?」 「当たり前じゃーん」 「…コート、前開けて」 「え?」 「やりたいんでしょ、あれ」 それなら、私に断る理由は一つもない。 敦のコートの中に入ってみる。 「うわー、ほんとに隠れちゃったね」 敦のコートの中はお菓子のにおいがした。 閉じ込められて、二人きり 13.01.27 配布元→capriccio 感想もらえるとやる気出ます! |