「藤真ってさぁ、よく”〜より”って言うよね」

    「は?言ってねーよ」

    「言ってるって」


    自分の口癖は自分で気付かないものだ

    口癖だけじゃなく普通の癖も

    私も藤真に言われて自分がよく唇を触るという癖に気が付いた

    確かあのとき、キスしてほしいの?って言われたんだっけ、ってそんなことは今はどうでもよくて


    「だってさっきも言ってたよ、絶対よく言ってるって」

    「言ってないって」

    「言ってるよ。自分の癖は気付かないだけでしょ」

    「言ってない。っていうかオレよりのが言ってるだろ」

    「え、嘘だ」

    「嘘じゃねーよ」


    あれ、そうだっけ

    やっぱり自分の癖ってわからないものだ

    だとしたら、私が自分でよく言っているのに気付かないように、、藤真だって自分がよく言ってるって気付かないだろう


    「だから、オレのは口癖じゃない」

    「じゃあ何?」

    「お前がよく言うから、うつっただけだろ」

    「えー、うつるかなぁ?」

    「一緒にいりゃなんでもうつるだろ」

    「…そう、かな」

    「そうだろ」


    そうかなぁだったら藤真もいつか唇をよく触りだすようになるかもしれない

    そしたらキスしてほしいのって言ってやろうかな


    ぼんやりそんなことを考えてたら、藤真の顔が近づいて、軽く唇が触れた


    「ちょ、いきなりびっくりするじゃん」

    「キスしてほしそうだったから」

    「え?」

    「触ってた、唇」


    そう言って藤真は私の唇に触れる



    ああ、なんか一生敵いそうもないなぁ



















     07.01.20



     タイトル配布元→capriccio