初恋はいつでしたか、という質問は卒業文集やら文化祭やらのアンケートで慣れている。いつも同じ答えをして、驚かれる。 「3歳のときだよ」そう言えば必ず「早くない?」と言われる。 「それ本当に早えよ」 たまたま家に遊びに来ていた幼馴染である赤也にまでそう言われた。 お母さんはちょうど買い物に出ていていない。赤也と私はリビングで一緒にテレビを見ながらお茶を飲んでいた。 「何で早いのよ」 「そんな昔じゃ、恋じゃないんじゃねーの」 「カッチーン」 「何だよその古臭い表現」 「私の初恋は間違いなく3歳です〜」 あのときの恋心と今の恋心がまったく同じだとは言わない。だけど、私の初恋は間違いなく3歳のとき。 初めて特定の人を、特別に好きだと思った。これが恋じゃなくてなんだって言うの。 「その初恋の相手俺だろ」 「何その自信満々」 「だってあの頃の身近にいた男なんて俺くらいだし」 「…まあ、そうだけど」 「ほら」 「じゃあ赤也の初恋っていつ?」 赤也は少し考えた様子を見せて、「」とだけ言った。 「…私”いつ”なのか聞いたんだけど」 「そんなんわかんねーよ。気付いたらずーっと」 「…ずーっと?」 「ずーっと」 「…はあ」 「はずーっとじゃねーの?」 「まあ、ずーっとかな」 やっぱり、と言って赤也は私の頭をぽんぽん、と軽く叩いた。 何だかムカついたの私は赤也の頭を強く叩いてやった。 「何すんだてめえ」と言われたけど気にしない。 ロマンチックの欠片もないけど、こんな両思いのなり方も悪くない。 07.11.05 タイトル配布元→capriccio |