「泣けばいいのに」

     「別に泣きたくないけど」


     藤真は強がりだ

     だって試合が終わった直後のコートでは泣いてたのに、私の二人のときは泣けないなんて


     「私しか見てないよ」

     「それが嫌なんだよ」

     「じゃあ後ろ向いてるから」


     そう言って私は藤真に背中を向けると、その背中に藤真が寄りかかる

     背中合わせの状態だけど、藤真が泣いてるのがわかった


     「私ねぇ、悔し涙ってかっこわるくないと思うよ」

     「……」

     「ていうか、すごいかっこいいと思うんだ」

     「……」

     「だからさ、私の前で強がらないでよ」


     藤真は肩を揺らして泣いたりせず、静かに涙を流してるんだろう

     いつもはすごい偉そうなのに、こんなふうに泣かれるとどうしていいかわからなくなる


     ああでも何だか、不謹慎だけど、すごくすごく、愛しいと思えるよ



     「お疲れ様」











  泣くなら、ここで
       (いつでもおいで、)


















     07.01.23



     タイトル配布元→capriccio