昨日、なけなしの勇気を振り絞って氷室に告白した。 ダメ元だったけど返事はなんとOK。 そんなこんなで、今現在氷室と一緒に帰っているわけだけど。 「………」 「………」 人ひとり分開いてる距離に、会話がないままどんどん駅に近づいて行く。 昨日も確かこんな感じだったけど、告白直後ということもあって浮かれ倒してたのでよく考えていなかった。 一緒に帰っても微妙に距離が開いてるし、何もしゃべらないし、 …氷室は私のこと好きなんだろうか。 「……」 別に好きじゃなくても「告白されたから付き合う」なんてザラにある話だし。 ど、どうしよう。なんか昨日から一転急に不安になってきた。 「あの、氷室」 「どうしたの?」 不安のあまり思わず話しかけたけど、まさか「私のこと好きじゃない?」なんて聞けるはずもない。 「え、えっと…。部活、どう?」 「大変だけど、好きでやってるし楽しいよ。は部活やってないんだっけ?」 「うん、運動苦手だし…」 中学では一応運動部に入っていたけど、高校の部活となれば結構どの部活も本気。 運動音痴にはハードルが高すぎた。 「部活、中学の時もやってなかったの?」 「一応やってたけど…大変だったから辞めちゃった。 氷室はすごいね、ちゃんとずっと続けてて」 「まあ、大変なこともたくさんあるけどね。やっぱり好きだから」 そう言った氷室の横顔は嬉しそうだった。 いいなあ、なんか。 「ほんとに好きなんだね、バスケ」 「?」 「今、ちょっと話してるの見ただけでわかったよ。すごく楽しそう」 「そりゃ、好きなものなんだから、話すときも楽しくなるよ」 『好きなもの』、か。 ちょっと胸が痛む。 私のことはどうなんだろう…。 「氷室ってあんまり表情変わらないけど、ちゃんと好きなもののときは嬉しそうになるんだね」 「好きなものを悲しそうに話すほど器用じゃないよ。それに、好きな人と一緒にいるんだし」 「…ええええ!?」 「え、そんなにびっくりすること?」 「い、いや、だって…私のこと好きなの?」 あっと思った時にはもう遅い。 思わず疑問に思ってたことを口に出してしまった。 氷室は目を丸くした後、少し笑った。 「もしかして、今日元気なかったのはそれが原因?」 「あ、えっ…と」 「そういえば、そうだね。ちゃんと言ってなったね」 氷室は立ち止まって、私の顔を見て囁くように言った。 「好きだよ」 そう言って、氷室は私にキスをする。 ああ、今日も結局浮かれ倒すことになりそうだ。 ベリル 12.07.14 原作ではすでに「どこがポーカーフェイスなの…」って感じの氷室ですが コートの外ではそうなのかなーと言う気がします 配布元→capriccio |