「暑いねえ」「暑いなあ」「暑いねえ」「暑いなあ」「あんたさっきからそればっか」「お前だってそうじゃねーか」

私とリョーガは不毛な会話をしながらそれぞれ扇風機の前にいたりうちわで扇いだり必死に暑さから逃れようとする。でも汗はだらだらと滝のように流れる。比喩表現ではなく本当に。

「何でこの部屋クーラーないのよー…」

「文句あるなら出てけよ」

「呼んだのあんたでしょ」

「そうだっけ…」


リョーガはぐでんと寝転がった。あ、死んだかな。そう思い顔を覗き込んでみる。


「おーい。生きてる?」

「死んでる」

「なんだ元気じゃん」


私はリョーガの横に寝転がる。ああ、暑いなぁ。今年の夏は猛暑というより酷暑だと言っていたけど本当だ。リョーガはこんなクーラーもないような部屋でどうやって今年の夏を乗り切ってるのだろう。自分の部屋にクーラーがある私だって乗り切れてないのに。


「あー、暑いー…」

「じゃあ寄ってくんな」

「何よ、せっかく可愛い女の子が寄ってきてるのに」

「…そうだな」

「え?」


誰が可愛い女の子だ!とかそういうことを言われると思ったのに、予想外の返答に思わずびっくりしてしまった。どうやらリョーガで暑さでやられてしまったようだ。


「…リョーガ」

「ん?」

「暑いって言ってるよね」

「ああ」


暑い暑いと、寄ってくるなと言ってたのはリョーガなのに、そのリョーガの腕は私の腰に回されてる。


「この手は何」

「何よ、せっかくかっこいい男の子が寄ってきてるのに」

「誰がかっこいいって?」

「俺だよ俺。超かっこいいじゃん」

「バカ言ってんじゃないわよ!」


そう言ってリョーガを軽く小突いたけど、その手を取られ、キスされた。私も暑いって言ってたはずなのに、本当はこんな手振り払ってしまいたいくらい暑いのに、リョーガの顔を見るとこのままでもいいか、何て思ってしまう。






















07.08.26



タイトル配布元→capriccio