ガタンゴトン、と電車が揺れる。今日はいつもより帰りが遅くなって、電車にいる人がいつもと違う気がする。あ、あの人サッカー部の人だっけ、あの子はテニス部だったかな。そっか、今は部活が終わる時間なんだな。あ、もしかして私座ってちゃいけないかな。だってみんな疲れてるだろうし。でも譲るのも変だし。相手がおばあさんならまだしも。
ガタン、と電車が止まる。ぱらぱら人が電車からホームへと降りていく。あ、右隣の席、空いた。誰か座るかな。

「ふう」

あ、三井くんだ。同じクラスの。私の隣に座ったのは三井くん。すごく疲れてるみたい。
さっきの駅を出発して少しすると、三井くんはすう、と寝息を立て始めた。授業中もよく寝てるのに、やっぱり練習、相当つらいのかな。三井くんを見ながらぼんやりそう考えてると、三井くんがぽてっと、私の肩に寄りかかってきた。

「三井く、」

三井くんはぐっすり眠り込んでしまっていて、起きる気配がない。どうしよう、私、次の駅で降りるんだけどな。ていうか三井くんはどの駅で降りるんだろう。起こしたほうがいいかな。

「ね、三井くん、起きて」

揺すってみるけどやっぱりダメだ、起きそうにない。今日はすることもないし、遅く帰っても別にいいんだけど、三井くんは寝過ごしたくないかな。でも起きないし、そうだ、あと3駅先まで行ったら起こそう。うん。

そう思ったけど、三井くんは3駅先に行く前にはっと目を覚ました。

「あれ、?」

「起きた?」

「あ、悪ぃ!」

三井くんは慌てて私から体を離した。別にいいのに。って、そのままでいるわけにもいかないか。

「本当、悪かったな」

「ううん、別に平気。三井くん、降りる駅どこ?」

「次」

「そうなんだ」

は?」

「え、とね、次の次」

実は前の前でした、とは言いにくくて思わず嘘を吐いた

「そっか、じゃ、オレ降りるわ」

「うん、バイバイ」


三井くんに会えるなら、明日もちょっと遅く帰ってみようかな。

少し寂しくなった右側を見て思った。
















君が居ない、右側
(明日も隣に座ってくれないかな)




タイトル配布元→capriccio
07.01.23