うちの中学の側にある、ちょっと大きな交差点の横断歩道。
四天宝寺の生徒はここでよく待ち合わせをして学校まで行く子がいたり、
たまたまクラスメイトに会って、そのまま一緒に学校へ行ったりすることが多い。

私も通学するときここを通る。
交差点に着くと、赤信号でクラスメイトの白石が横断歩道の前で立ち止まっていた。

「あ、白石、おはよー」
「おお、、おはようさん」

私と白石は登校時間が同じなのか、朝ここで会って学校まで一緒に行くことが多い。
さすがに毎日とはいかないけど一週間のうち3日くらいはここで会う。


「最近暑くなってきたねえ」
「そうやなあ、部活しんどくてしゃーないわ」
「これからもっと暑くなるんでしょ?」

なんでもない会話をしながら学校までの短い時間を歩いて行く。
この時間がすごく嬉しい。

教室に着けば、席が離れている白石と私はあまり話さなくなる。
仲はいいほうだけど、一緒に遊びに行ったりなんてことはない。
多分、白石にとって私は「朝よく会う仲のいいクラスメイト」だろう。


だからこそ、あの朝の時間が大切なのだ。





「……今日はいないか…」

例の交差点、周りを見渡してみるけど白石の姿はない。
ちょっと残念だけど、仕方ない。

横断歩道を渡ろうとしたけど、赤信号。
しょうがない、と思って立ち止まっていると、後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。

「よ、
「あ、白石。おはよう」

わ、赤信号ラッキー!と心の中でガッツポーズ。

「あ、赤信号なんか」
「うん、さっき変わったばっか」
「なんや、がオレのこと待っててくれたんかと思ったんやけど」

え。
白石からとんでもない言葉が聞こえてきた。

「なーに言ってんの」

いやいや、白石は結構冗談も言ったりする。きっとこれもそうだ。
そうでなければただの軽い気持ち。きっとそうだろう。
真剣に受け取るわけにはいかない。

「そんなふうに軽く言われると傷つくなあ」
「え、だって」
「昨日もここでのこと待ってたんやで」

白石はさっきまでの冗談めかした顔と違って真剣な表情になる。

「昨日だけやないで。今まで何度も、な」

白石の表情で、冗談でも軽い気持ちでもないのがわかる。
心臓が爆発しそうだ。

「あの、私も」
「うん」
「今日は本当に赤信号で待ってただけだけど、ここで白石に会うの、すごく楽しみにしてたよ」

自分でもびっくりするくらい声が震えている。
気づけば信号はとっくに赤から青に変わっている。

「明日からは「赤信号だから待ってた」なんて言い訳いらへんのやなあ」

白石は嬉しそうに笑ってそう言ったから、私もつられて笑った。























赤信号、立ち止まって
11.06.09


以前は片思い→両想いになる話書くの苦手だったんですが
最近はすごくそういう話書くの楽しいです 






配布元→capriccio