一ヶ月前の11月。いきなりクラスメイトの赤司が私に告白をしてきた。
クラスメイトと言っても今まで話したことは数えるほど。
申し訳ないけどそんな状態で付き合うのはちょっと…と思ってお断りした。

「そうか」

彼の返事は意外なほどあっさりしたものだった。
あまり赤司のことは知らないけど、聞いた話によると負けたことがないとかすべてボクが正しいとかただならぬことを言っているとのことで、お断りなんてしたらどうなるかと思ったけど。






「…なんですか」

あれから一ヶ月。この一ヶ月間、何かというと赤司は私に話しかけてくる。
授業の話、部活の話、昨日見たテレビの話みたいに普通の話から、宿題ちゃんとやってきたか、最近痩せたようだがちゃんと食べているか、とか、あなた私のお母さんですか…なんてことまで。
今までほとんど話したことのなかったのに、もう一生分喋ってるんじゃないかと思う。

「…あの、赤司」
「なんだ?」
「なんでこんなに話しかけてくるの?」
「一ヶ月前に言っただろう。ボクはが好きだと。好きな人と話したいと思うのは自然なことじゃないか?」
「お断りされたら話し難くなるのが自然なことだと思いますけど」

順番が逆ならわかる。よく話すようになって、告白されるなら。
なんで告白されて断ったらこんなに話すようになるんだ…。

私だって人の子。告白されて、しかも断った相手と普通におしゃべりなんてしにくい。

「ボクが断られたのは付き合うことであって、話しかけるのを断られた覚えはない」
「うん、まあ、そうだけど…」
「何か不都合が?」
「そりゃ、あるよ。普通さ、自分のこと好きだって言ってる人とおしゃべりなんて、意識しちゃってできないよ」
「そうか、ボクのことを意識しているのか」

赤司は納得したような声を出して、私に一歩近づく。
近い。


「な、なに」
「最近、目が合うと逸らすようになった。前はそんなことなかったのに」

そりゃ、そうだろう。
自分に恋愛感情で好意を持っている人と目を合わすのは、なかなか苦しい。

「ボクを意識しているのか」
「あ、赤司、ちょっと近い」

そう言ってる間に赤司はじりじり私に詰め寄る。
整った綺麗な顔が、目の前にある。

「あ、赤司」
「一ヶ月前と同じことを言う」

同じことって、それは。

「ボクと付き合わないか」

意識してるのは、ただ、告白されたから。
そう思っていたのに、私の口からは違う言葉が出た。

「…はい」

そう答えたら、赤司は笑った。
初めて見る、柔らかい笑顔。

「…ねえ、これ、一ヶ月前から狙ってたの?」
「なんのことだ」

負けを知らない人は恐ろしい。
まさか私もはまってしまうとは。

「今年はいい誕生日になったな」
「え、今日、誕生日なの?」
「ああ」

………やっぱり、これ、狙ってたんでしょ。



















閉じ込めた空
12.12.20

ハッピーバースデー!













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タイトル配布元→capriccio