今日は5月5日、連休の終わりだけど遊ぶわけにはいかない。 来週提出の日本史のレポートがあり、それをやらなければいけないのだ。 今回のレポートは、「クラス替えしたばかりで、クラスメイトに馴染めてないでしょう?」という先生の気配りにより、 隣の席の人と一緒にレポート提出することになったのだ。 ほとんどの人は昼休みなり放課後なりに済ませてしまったようだけど、私はそういうわけにもいかなかった。 私の隣の席は氷室で、部活で忙しい彼は連休の真っ只中の今日しか一緒にやる時間がなかったのだ。 「ごめん、オレのせいでせっかくの連休潰しちゃって」 「いいよ、別に。元々予定なかったし」 学校の図書館のくつろぎスペースでレポートを進める。 いつもはそれなりに人がいるけど、今日は連休中ということもあってかほとんど人がいない…どころか司書の先生すらいない。 職員室までわざわざ鍵を借りに行って少し手間がかかったけど、周りを気にせず喋ったりしながらレポートできるのはありがたい。 元々くつろぎスペースは飲み物を飲んだり小声でなら話すことも認められていたりと相談してレポートするにはここしかないと思ってたけど、 周りに人がいないなんて、協力してやるにはうってつけの環境だ。 おかげでだいぶ進むのが早く、昼過ぎにはほとんど予定のところまで終わっていた。 これなら提出に間に合わせられそうだ。 少し安心したら小さい欠伸が出てしまった。 「…少し休憩しようか」 氷室が手を休めてそう呟いた。 「…見てた?」 「何を?」 「いや、別に。そうだね、休憩しよっか」 私の欠伸を見て休憩しようと言い出したのかと思ったけど、見てないふりをしてくれたようなのでそのままにしておいた。 …口はちゃんとおさえたけど、ちょっと恥ずかしい。 氷室は鞄からペットボトルを取り出すとそれを口に含んだ。 特に喉が渇いてるわけでもない私はそんな行動をぼんやり眺めていて、ふと前から思っていたことを口にした。 「氷室って泣きボクロあるけど、泣き虫だったりする?」 そう言うと氷室は面食らったような顔をして、少し笑った。 「泣き虫に見える?」 「ううん、全然。だからどうなのかなーって聞いてみたけど、やっぱ違うんだ」 「全然泣かないとは言わないけど、泣き虫ってほどではないかな」 「そっか。確かに氷室ってなんかクールだよね。あんまり笑わないし、怒ったり悲しんだりとか、そういうところもあんまり見た覚えないし」 「よく言われるな、それ」 肯定しないってことは実は気にしてたりするんだろうか。 私は感情の浮き沈みが激しい上にすぐに顔に出るタイプだから、クールな人って憧れるんだけど。 「オレだって嬉しいときは笑うよ。嬉しいときに笑わないでいられるほど器用じゃないし」 「じゃあ、今は嬉しいんだね?笑ってるよ」 「ああ、楽しいよ」 少しホッとして息を吐いた あまり話したことがなかったから今日は少し緊張してたんだけど。 まあ、そりゃここで「つまらないよ」なんて言う人はいないけど、聞くより前に笑ってたし、よかった。 「だってと二人きりなんだから」 安心していたのも束の間、次のセリフに度肝を抜かれた。 え、え、今のは一体…!? 「はすぐ顔に出るね」 「え、あ…うん、よく言われる。じゃなくて、その」 「今のはそのままの意味だよ」 そう言って表情を崩さずにレポートに向かった氷室を見て、 ああ、やっぱりポーカーフェイスって憧れると思った。 11.05.05 氷室は恥ずかしいことも平気でさらっと言いそうなイメージです 氷室っていつ陽泉に来たんですかね…。 この話は5月の話ですが、 もし4月からだったら2年生時(つまり本編登場より前)、 夏ごろからだったら3年生時(少しだけ未来設定)ってことでお願いします。 配布元→capriccio |