大晦日、一人暮らしの恋人の火神の家で一緒に大掃除。
恋人と言えど片付けや整理をするのは気が引けるので私は窓拭きやら掃除機掛けやらをしている。

「お前自分の部屋の掃除はいいのかよ」
「普段から綺麗にしてますから!」
「へー」
「信じてないでしょ」
「別に疑ってねーよ」
「火神この家一人で掃除大変でしょ?」
「まあ、オレは助かるけど」

一人暮らしするには大きすぎるこの部屋。
掃除するのも一苦労だろうと半ば無理矢理押しかけたけど、喜んでくれているようでよかった。

「お、紅白の時間だ」
「え、もうそんな時間?」
「遅くなったら送ってってやるよ」

別に送って行ってもらわなくても結構なんですけど。
そんな私の心のつぶやきに火神は気付くわけもなく、テレビをつけた。

「あ、除夜の鐘」
「え?まだだよ」
「いや、CM」
「ああ…」

そっか、と納得しつつ私は火神の耳を塞いだ。

「…何してんだよ」
「いや、除夜の鐘聞かれたらまずいなあと思って」
「なんでだよ」
「だってこれ以上煩悩なくしてどうするのよ」
「はあ?」

いや、だって一人暮らしの男子高校生が恋人連れ込んでも何もしてこないってどう考えてもおかしいでしょ。
これ以上煩悩失くされたらたまったもんじゃない。

「何言ってるんだよ…」
「このおいしい状況で手を出さない火神くんを嘆いているのよ」
「なんだそりゃ」
「火神今何歳?」
「16」
「私たち付き合ってどのくらい経つ?」
「半年」
「火神の家っていつも火神しかいないよね」
「一人暮らしだからな」
「そんな状況で何もしないの?」

火神はぐっと肩を強張らせた。
だって、その通りでしょ。
女の子なのにはしたない、なんて言われそうだけど、女の子にだってそういう欲はあるのよ火神くん。

「…お前、もうちょっとこう…」
「なによ」
「…今日、帰せなくなるぞ」
「いいよ。だって友達の家行くって言ってあるし、二年参りするとか言えばいいし」

耳を塞いだ成果はあったようだ。
食欲はともかく、その辺りの煩悩はなくさないでください。









グラジオラス
12.12.31

私の書く火神ってこんなのばっかですね…




配布元→capriccio







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