「そっか、持ってないか」 「ごめんね」 「いいよ、でもどうしよう…」 日本史の授業の前、テスト前に持って帰った資料集を持ってくるのを忘れたのに気付いた。 隣のクラスまで友達を訪ねてみても彼女も持っていないそうで…。 「まあいいや。隣の子に見せてもらうよ」 ほかの友達も全滅だったし、仕方ない。 そう言って友達と別れようとしたとき、誰かとぶつかった。 「わ、ごめん」 「いや、こっちこそ」 あ、この人、隣のクラスの氷室くんだ。 話したことはないけど、結構な有名人なので知っている。 「あ、ねえ、氷室くん」 友達は何か思いついたかのように氷室くんに話しかける。 「この子、日本史の資料集忘れちゃったみたいなんだけど、氷室くん持ってない?」 「資料集?」 氷室くんは私をじっと見る。 「うん、もし持ってたら貸してくれない?」 「いいよ。ロッカーにあるから」 おお、友人よ氷室くんよありがとう! 私は廊下にある氷室くんのロッカーまで着いていった。 「はい」 「ありがとー!」 「…隣のクラスなの?」 「ああ、うん。そっか、氷室くんは私のこと知らないよね」 氷室くんは転校したとき話題になったりしているから私は氷室くんを知ってるけど、氷室くんは私のことなんて知らないだろう。 「っていうの。これ、本当ありがとうね」 「どういたしまして」 * 「氷室くん、いる?」 日本史の授業が終わり、休み時間。 借りた資料集を持って、隣のクラスの友人に氷室くんを呼んでもらう。 「さん」 「氷室くん、これありがとうね。助かったよ」 はい、と日本史の資料集と飴を5個ほど渡す。 「これ、お礼ね」 「そっか。ありがとう」 じゃあね、と自分の教室に戻ろうとすると、氷室くんに手首をつかまれる。 え、ど、どういうこと。 「ひ、氷室くん?」 「さん、変なこと言っていいかな」 「変なこと?」 「オレ、君が好きみたいだ」 え、好き?氷室くんが私を? さっき初めて喋ったばっかりの私を? えええええ!? 「え、ちょ、えええ?!な、なんで!?」 「さっき話したときから、さんの顔が頭から離れないんだよ」 「い、いや、だって、今まで話したこともなかったのに…」 「一目惚れってあるんだね」 い、いや、そんな冷静に分析しないでください…! 「さん、そんなに慌てなくていいよ」 「あ、慌てるよ!」 「別に今すぐ付き合ってほしいなんて言わないから」 その言葉に少し安心する。 だって、私は氷室くんのことを全然知らない。 好きも嫌いも、何もわからない。 「さん」 「は、はい」 安心したけど、氷室くんは手を離してくれない。 握った手は、とても力強い。 「これから、覚悟してね」 覚悟って何を。 全ては私の腕をつかんだ手が物語ってる。 捕えた手首に、キスひとつ 12.12.11 リクエストの氷室に一目惚れされる話でした しずくさんありがとうございました! 感想もらえるとやる気出ます! タイトル配布元→capriccio |