今日は珍しく私の部屋に白石が来ている。
部活終わりで喉が渇いているという白石は冷たいお茶、私は温かい紅茶を飲んでいる。

「わあ、一気飲み」
「しゃーないやん」
「ペットボトルごと持ってこようか」

まだ暑くはないのにそんなに飲むとは思わなかった。
冷蔵庫からペットボトルを持ってくる。

「悪いなあ」
「いいよ、うちみんなあんまり飲まないし飲んじゃって」

そう言って2リットルのペットボトルを持ってくる。
もう中身は半分ほどだけど、さすがに全部は飲まないか。

「あ」
「?」

ペットボトルを見てあることを思い出す。
この間友達に教えてもらった昔のCM動画。

「ねえねえ、こんなの知ってる?」

自分のベッドの枕元にあるうさぎのぬいぐるみを手に取る。
パンダがよかったけど、生憎私は持っていない。

そのぬいぐるみの口と、白石の唇をくっつけた。

「奪っちゃった〜」

少し前にやっていたというCM。
友達が見つけて教えてくれた。
女子の間では可愛いと評判になっている。

「!」

白石は目を丸くする。
あまり驚いたりしないから、新鮮だ。

「大胆やなあ」

白石は微笑みながらそう言う。
?なにが?

「?」

白石は頭の上にクエスチョンマークがついた私を見て、はあと一つため息を吐いた。
私の手からうさぎのぬいぐるみを取る。

「奪っちゃった〜」

白石はそう言って、さっきの私と同じことをする。
ぽっと自分の顔が熱くなったのを感じる。

「どや、結構恥ずかしいやろ」
「!」

思わず頬を手で押さえる。
た、確かに…。
結構とんでもないことをしてたんだな、私…。

「…なあ」
「は、はい」
「ホンマにしてもええの?」
「!」

本当に、というのは、ぬいぐるみではなくて、直接ということだろう。

「え、え!?」

白石は、いつもそう。こうやって、聞いてくる。
いつも私に気を遣って、私の嫌がることは絶対しない。

「…い」
「?」
「いいよ」

ぎゅっと白石の服の袖を掴む。
恥ずかしいから、顔は見ない。

白石は優しい。
優しいから、言わないと、何もしない。

「……」

白石は私の頬を撫でる。
ドキドキしながら目を瞑った。

キスをした。
初めての、キス。

「奪われてもうた」
「そ、それ白石が言うの?」
「最初にしてきたんはそっちやん」

白石は悪戯っぽく笑う。
私たちはもう一度キスをした。















最初のキスを覚えていますか
14.04.14

ヘタレじゃなくて紳士だから相手の許可を得るまで何もしてこない白石推しです
ヘタレじゃなく臆病じゃなく紳士なんですよ!
ガンガンくる白石よりこういう白石が好きだなあと実感中






配布元→capriccio



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