大我の家に行く機会は多い。
大我は一人暮らしだし、部活に忙しい身なので遠出するデートはなかなかできないし、普段のデートはもっぱら彼の家だった。

「お邪魔します!」
「どーぞ」

今日も大我の家に来た。
夕飯を一緒に食べる予定だ。

「座ってろよ。今作るから」
「わーい!」

諸手をあげて喜ぶと、大我は笑った。
「喜んでもらえると作り甲斐あるな」と。


リビングのソファに座ってテレビをつける。
大我の家のソファはフカフカ。リビングも片付いている。
カウンターキッチンになっている台所に立つ大我に話しかけた。

「大我の家っていつもきれいだね」
「そうか?物ねえだけだけど」
「いや、埃も全然ないし…やっぱり一人暮らしすると家事スキルって上がるもの?」

大我の家はいつだって片付いているし、掃除洗濯全部自分でやっている。
料理は御覧の通りだし、高校生男子とは思えない家事スキルだ。
一方私は…ネギチャーハンぐらいなら作れるけど大我のスキルに比べたら赤ん坊レベルだろう。

「まあ、全部自分でやんなきゃいけねーしな。でもあっちいたときもこんぐらいやってたかな」
「アメリカいたとき?」

アメリカに住んでいたときは家族で暮らしていたと聞いている。
そこで真っ先に浮かんだ疑問をぶつける。

「お母さんは?仕事忙しかったの?」

恐らく99%の人が思うであろう疑問だ。
お父さんは忙しい仕事をやっているようだから家事はできないだろうし、お母さんもお仕事していたのかな。

「いや、うち母親いねえし」
「え…」
「あれ、言ってなかったっけか」

大我はなんでもない口調で話す。
前に「この部屋、家族で暮らすことになっていたけど、父親が仕事でアメリカに戻ことになって、だからここで一人暮らしをしてんだ」と言ってはいた。
そのとき確かに母親という単語は聞いていなかったけど、「父親と母親がアメリカに戻っている」のだと思い込んでいた。

「ごめん、変なこと言っちゃって」
「?別に」

普通こういうことを聞かれると苦い顔をされるけど、大我は本当に気にしていない様子だった。
ほっと胸を撫で下ろす。

「ま、だから結構料理とか自分でやってたぜ。自分で作ったほうが自分好みの味にできるし」

大我は器用に炒め物をしながら会話を続ける。
大我ってすごいんだなあ…。そう思いながら彼を見つめる。

「…私も一人暮らししようかなあ…」

恋人がこんなに家事できるんだから、私もできないといけない気がする。
手際よく料理を進める大我を見て自然と零れた。
大我はきょとんした目でこちらを見てくる。

「なんで?」
「うーん…やっぱり「やらなきゃいけない」って事情がないと家事しない気がして」

今は実家暮らしでお母さんが家事をやってくれているし、本当自分の部屋の掃除とネギチャーハンしかできない。
やっぱりやってくれる人がいるとどうしても頼ってしまうし、こうなると一人暮らしがいいんじゃないか。

「ま、どっちにしろ卒業したらの話だけど」

高校生の一人暮らしなんて大我みたいな特別な事情がないと許されないだろう。
一人暮らしするにしたって二年以上先の話だ。

「お前のことだから一人暮らしでも『大我お腹空いたー!』とか言ってきそうだけどな」
「!そんなことな…くもない」
「断言できねーのかよ」

大我は笑いながら出来上がった料理を運んできてくれる。
こんなおいしそうな料理目の前にしたら、大我に作ってほしくもなるってものだ。

「お前、結婚してもそんな調子っぽいよな。別にオレ料理好きだしいいけど」

大我は「いただきます」と手を揃えながらそう言ってくる。
自分の顔が赤くなるのを感じた。

「?食わねーの?」
「え、食べる!いただきます!」

手を合わせてから箸を持った。
まだ少しドキドキしている。

「…私、頑張るね!」
「?おう」

私たちが結婚するとしたら10年後ぐらいだろうか。
ちゃんと頑張ろう。家事できるようになろう。
10年後も、大我が私を好きでいてくれるように。












10年先まで愛してる!
15.01.20





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