学校の後に辰也の部屋に行くことはよくある日常のことだ。
辰也の家に行って、辰也の部屋で彼がお茶を淹れてくれるのを待つ。
ときたま私も手伝うけれど、基本的に「はお客さんだから」と言って断られてしまう。
…辰也に家に行っても「お客さん」にならない日が早く来ればいいなあと思う。
「あれ」
辰也がお茶を淹れてくれるのを待っていると、テーブルの上に見慣れないものがあるのに気付いた。
ピンクや緑など、いろとりどりの包み。中に入っているのは飴かチョコレートだろうか。
あまりお菓子は持っていないのに珍しい。
「お待たせ」
「あ、ありがとう」
一つ包みを手に取ると、辰也がやってくる。
「あ、それ」
「あ、ごめん勝手に」
「いや、別にいいよ。食べる?もらいもののチョコレートなんだけど、オレあんまり食べないからさ」
「そうなの?じゃあ、いただきます」
そう言われたので遠慮せずチョコレートを口に含む。
かなり甘めのチョコレートだ。確かに辰也はここまで甘いのは好まないしあまり食べないだろう。
「すごく甘いね。辰也は確かにちょっと苦手?」
「まあ、ね」
「?」
辰也にしては曖昧な返事だ。
首を傾げながら、辰也が持ってきてくれた紅茶を飲んだ。
*
あれから少し経って、いつものように辰也と談笑中。
…なんだか、体が無性にむずむずする。
「…?」
自分で自分の手を握る。
指の間に触れると、なんというか、その。
変な感じ、というか…。
「?」
「っ!?」
辰也が私の顔を覗き込んでくる。
一気に顔が赤くなってしまった。
「どうしたの?」
「ど、どうもしてない…」
「でも…」
「ひゃっ!?」
辰也が心配した顔で私の腕に触れる。
それだけのことで、体がゾクリと震えた。
「?」
「ま、待って」
今触れられると、なんだかまずいことになる気がする。
まずいことというのは、その。
「気分でも悪い?」
「そ、そうじゃなくて…。…っ」
辰也が私のおでこに触れる。
また体の奥から声が溢れ出る。
「た、辰也…」
「ん?」
「あんまり、触らないで…っ」
触られると、変な気分になってしまう。
変な気分、そう。
辰也に、触れてほしい、と。
「どうして?」
「ど、どうしてって…。んっ…」
そっと覗き見た辰也の目は、心配の色ではなく悦びの色に満ちている。
辰也は、全部わかっている。
「た、辰也…っ」
ぎゅっと辰也に抱き付く。
辰也に触れたい。触れてほしい。
羞恥心より、欲だけが溢れてくる。
「」
「辰也、さわって…」
自分一人では、この熱は止められない。
辰也じゃないとダメなのだ。
「してほしい、の…」
辰也を見上げてそう言うと、辰也は妖しく笑う。
弧を描いた唇を私に寄せる。
辰也の首に腕を回して、その唇を貪る。
「ん…っ」
キスをしただけで、背中がゾクゾクと震える。
辰也に触れているところから、熱が溢れだしてくる。
「辰也…っ」
「可愛いね、」
辰也は私を抱き上げてベッドに寝かせる。
私の潤んだ目を見て、嬉しそうに呟いた。
「してほしくて、たまらないって目だ」
「あ…っ」
辰也は私のシャツのボタンを一つ一つ丁寧に外す。
いつもと同じ光景なのに、じらされているような、そんな気分になる。
ときどき肌に直接触れる辰也の指が、感じる材料になるほどに。
「辰也、はやく…っ」
「待てないの?」
「待てないの…っ」
早く早くと、体が辰也を求めてる。
辰也に触れてほしくて仕方ない。
辰也に抱いてほしい。
まだ何もされていないのに、秘部が疼いて仕方ない。
「ここ?」
「あっ、ちが…っ」
「気持ちよさそうだけど」
「ん…っ」
辰也は優しく胸の谷間からお腹までの間に指を滑らせる。
体を捩らせると、辰也が面白そうに笑みを浮かべるのが見えた。
「た、辰也…っ」
思わず辰也の腕を掴む。
触れてほしいのは、そこじゃない。
「どこ?」
「や…っ」
「言って?」
「…っ」
言えない。どうしても、それは言えない。
でも、疼きが止まらない。
「あ…っ、わ、わかる、でしょ…っ」
「わからないなあ」
辰也は余裕の笑みで私を見る。
多分辰也は全部わかっているんだ。
私がなんだかおかしいことも、どこをどうしてほしいかも。
「た、つや…」
疼く体を起き上がらせて、私の上にいる辰也に体を寄せる。
そのまま手のひらを辰也の下半身に移動させる。
少し躊躇いながら、辰也の秘部に触れた。
「わ、わかるでしょ…?」
今私がしていることも相当恥ずかしいけれど、言うよりマシだ。
じっと涙で潤む目で辰也を見つめると、辰也はぎゅっと私を抱きしめた。
「、可愛い。可愛いよ」
「た、辰也…っ」
「想像以上だ。最高だよ、」
辰也は嬉しそうな表情で、私に何度もキスをする。
ついばむようなキスを繰り返した後に、深く長いキス。
「あ…っ」
「ここ?」
「あっ!」
辰也の指が、下着越しに私の秘部に触れる。
いつも以上の刺激に、体をはねさせてしまう。
「あっ、あ…っ!」
下着はすでにぐっしょり濡れてしまっている。
辰也はその下着をはぎ取ると、直に私の秘部に触れる。
「ん、あ…っ!」
辰也の指がつるりと中に入ってくる。
一瞬痙攣のような、細かい震えが体を襲う。
「いっちゃった?」
「あっ、ちが…っ」
辰也の言葉に顔がかあっと赤くなる。
その通りではあるんだけど、恥ずかしくて肯定できない。
「そう?じゃあ」
「あっ!?や、やあ…っ!」
辰也が中の指をゆるゆると動かし始める。
敏感になっている体はおもしろいぐらいに反応しているのだろう、潤んだ視界に辰也の笑った顔が微かに映る。
「あっ、あっ、たつや…っ」
「可愛いな、」
「やああ…っ」
またすぐそこまで絶頂が来ている。
ぎゅっとシーツを掴んで、ギリギリのところで堪えている。
「我慢しないでいいよ」
「あっ、や、辰也…っ」
「」
「あ、ああ…っ!」
辰也に耳元で甘く名前を呼ばれて、また簡単にイってしまった。
本当に私の体はおかしくなってしまったようだ。
「た、つや…」
ぎゅっと辰也に抱き付く。
これだけされたのに、まだ足りない。
「」
「辰也、おねがい…」
そう言うと、辰也は優しく微笑んでくれる。
辰也は意地悪だけど、いつだって最後は私の望む通りにしてくれる。
「、綺麗だよ」
辰也は私の頬を撫でながら、優しい声で囁いた。
だから私は辰也に弱い。
どんなに意地悪をされても、恥ずかしいことを言われても、最後には私に優しくしてくれることを知っているから。
「ん、あ…っ!」
「…っ」
辰也自身が私の中に入ってくる。
飛びそうになり意識を必死で捕まえる。
「あっ、辰也…ゆっくり…っ」
動き始める辰也の肩を掴んで、絞り出すような声で言った。
あまり激しく動かれると、またあっという間に果ててしまいそうだ。
「ゆっくりでいいの?」
「ゆ、っくりじゃなきゃ、あ…っ、変、変になっちゃう…っ」
辰也の言う通り、もっと激しくと体は訴えているのだけど、その欲望のまま任せていたら本当に意識が飛んでしまいそうだ。
そうしたほうが楽なのかもしれないけど、それは嫌だった。
辰也と一つになっているときに意識がなくなるなんて、そんなのは悲しい。
「あっ、辰也…っ」
「…」
私がお願いしたように、辰也はゆっくり優しく動いてくれる。
相変わらずいつも以上の快感ではあるけれど、ギリギリ保っていられるラインを越えないように。
「あっ、辰也、辰也…っ!」
辰也の背中に腕を回す。
しがみつくように抱き付いて、足まで辰也に絡ませる。
抱きしめあってキスをして、本当に一つになっているようだ。
「あっ、あっ、やあ…っ!」
「…っ」
頭の中がふわふわして、何も考えられない。
全部全部、辰也でいっぱいになっていく。
今自分がどんな状態なのかわからないぐらいに。
「あっ、辰也…っ」
「…っ」
辰也も私の中で果てて、私の上に覆いかぶさる。
少し重いくらいが、今はちょうどいい。
「はあ…」
「ん…」
でも、やっぱりまだ疼きは止まらない。
体はまだ辰也を求めてる。
「辰也…」
「ん?」
「…まだ、足りなくて…」
ぎゅっと辰也を抱きしめる。
まだ足りない。辰也が足りない。
この感覚は、辰也でしか埋められない。
「わかってるよ」
辰也が私の頬を撫でる。
それすら今の私には快感だ。
*
「…ん」
目を覚ますと、辰也の顔が一番に飛び込んでくる。
「おはよう」
「…おはよう?」
はっきりしない意識を段々覚醒させていく。
…なんだか、体が重い。
「…っ!?」
はっとさっきまでのことを思い出す。
わ、わたし、あれだ。なんか、とんでもないことを言っていたような…気が…。
「、体大丈夫?」
「あ、えーと…」
「すごかったからねあんなに」
「わーーーー!待って!待って!!」
かーーーーっと顔が一気に赤くなる。
そうだ、その、やたらと体が疼いて、その。
「どうしたの?」
「ど、どうしたのって…辰也が何かしたんじゃないの!?」
どう考えたってあんなになるのはおかしい。
今まで何もされていないときに体があんな状態になったことなかった。
絶対、絶対辰也が何かしたんだ!
「オレじゃないよ。オレはチョコ食べる?って言っただけ」
「!」
あのチョコ、テーブルの上にあったあの甘いチョコが原因か。
そう言われれば辰也が食べようとしなかったのも合点がいく。
やっぱり辰也がそう仕向けたんじゃない…!
「やっぱり辰也じゃない!」
「だから違うって。別に無理矢理食べさせたわけでもないし」
「!そうだけど!」
「可愛かったなあ、。もう一個食べる?」
そう言って辰也はまたチョコを一つ差し出してくる。
その手を跳ね除けて、思いっきり叫んだ。
「辰也のバカーーー!!」
氷室くんと媚薬
15.05.01
氷室くんと○○シリーズ
感想もらえるとやる気出ます!
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