今日の部活はミーティングだけで終わった。
私と辰也は辰也の家に直行した。
部活の疲れもないので軽い足取りだ。
「何かDVDでも見る?」
「うん」
そう言って辰也は立ち上がって本棚のほうへ向かう。
「あっ」
途中、辰也の足が私の鞄に当たってしまう。
さっき筆箱を出そうとして開いたままだったから、中身が少し出てしまった。
「、ごめん」
「大丈夫だよ」
別に大したものは入っていない。
中身を片付けようと立ち上がらず立膝のまま鞄のほうへ寄った。
「…?」
床に転がる教科書とノートの中に、見覚えのない封筒がある。
真っ白で綺麗な封筒。
差出人の欄には、知らない男子生徒の名前が書いてある。
「…あっ!?」
もしかして、これはラブレターというやつかもしれない。
慌てて上にある辰也の顔を見上げた。
「た、辰也。あの」
「これ、どういうこと?」
辰也は膝をついて私に目線を合わせる。
なんだか怖くなって私は目線を逸らした。
「し、知らない。今初めて見たし…」
「…ふうん」
辰也は疑いの眼差しを向けてくるけど、本当に知らなかった。
いつの間に鞄に入っていたのかもわからない。
「きゃっ!?」
辰也は無表情のままひょいと私を抱き上げる。
あ、これまずい。
そう思って辰也の腕の中で抵抗するけど、辰也に勝てるはずもない。
私はあっさり辰也によってベッドに転がされてしまった。
「た、辰也あのね!」
「なあに?」
辰也の口調は優しいけど、声は全然優しくない。
むしろ恐怖すら感じる。
思わず両手を体の前に置いて防御態勢を取ってしまう。
「」
「う…」
辰也の鋭い視線に射抜かれて、きゅっと身を縮こまらせた。
私は悪いことしていないはずなのに、なぜか怒られている気分になる。
「ダメだよ、」
「っ」
辰也は私の両腕を掴んで、ぎゅっと私の頭上で押さえつける。
悪い予感がして、背筋が凍る。
その予感が見事に当たって、辰也は左手で自分のネクタイを解くと、そのネクタイで私の両手を結んでしまう。
「た、辰也、やだ…っ」
ふるふると首を横に振るけど、辰也は冷たい視線を崩さない。
怖くなってぎゅっと目を瞑る。
「そんなに見たくない?」
「え…」
辰也は私のネクタイに手をかける。
慣れた手つきでそれを解くと、今度はそれで私の目を覆って頭の後ろで結んだ。
「や、やだ辰也…っ」
「見たくないんだろ?」
「そうじゃない!」
真っ暗の視界の中、叫んでみるけど辰也は目隠しを取ってはくれない。
上半身がひやりとしたクーラーの効いた外気に触れて、シャツを脱がされたことに気付く。
「ん…っ」
ぬるりとしたものが私のお腹を這う。
恐らく辰也の舌だろう。体が反応して、ビクンと跳ねてしまう。
視界が遮られているせいなのか、触覚に神経が集中している気がして、やたらと敏感になっている。
「あ…っ」
辰也は私のブラジャーを上にずらすと、その胸の頂点につんと触れた。
しっかりとは触れずに、指の先で弄ぶように触れてくる。
微妙な刺激が体を走って、少し腰を浮かせる。
「可愛いね」
「ん、ん…っ」
「はすごく可愛いよ」
その声が聞こえたすぐ後に、辰也がぎゅっと私を抱きしめてくる。
今までなにをされるかわからなくて怖かったけど、こうされると怖くない。
全身で辰也を感じられる。
「はオレのだよ」
辰也の指が私の頬に触れる。
冷たい指だ。少し背筋が凍えた。
「辰也…」
「それをちゃんと教えないと」
「ん…っ」
私の唇に、辰也の唇が触れる。
ついばむようなキスから、段々深いキスに変わっていく。
口の端に唾液が伝う感触がする。
「の全部に、教えないと」
辰也の手が私の太ももに触れる。
足を曲げて逃げようとしても逃れられない。
辰也の声からは怒りより、少し楽しげな感情さえ読みとれる。
嫉妬心は本物なんだろうけど、この状況を楽しんでいる気持のほうが強いのだろう。
嫉妬心にかられての行動なら、私にも鎮めようがある。
だけど、こうなっては私に彼を止める術はない。
「あっ!」
辰也の手が私のショーツにかかる。
するりと脱がされて、思わず声をあげてしまう。
秘部に空気が当たって身を捩る。
「足、開いて」
辰也の声にかあっと顔が赤くなる。
「や、やだ」
辰也の言葉に首を横に振る。
普通にこういうことをしているときだって恥ずかしいのに、今、目隠しをされて、手を拘束されて、
こんな状況でそんなこと、できない。
「」
辰也の冷たい声が部屋に響き渡る。
私にノーと言わせない声だ。
辰也は、普段はいつも私にすごく優しくて、これでもかというぐらいに甘やかしてくるくせに、こういうときは意地悪なことばかり言う。
「う…」
「」
辰也がもう一度私の名前を呼ぶ。
指で唇をなぞられて、これ以上抵抗できないと思う。
羞恥心を必死に抑えながら、ゆっくり足を開いた。
辰也の顔は見えないけど、きっと妖しく笑っているのだろう。
「…た、辰也?」
足を開いても、辰也はなにも言わないしなにもしてこない。
不安になって辰也の名前を呼ぶけど、返事が返ってこない。
もしかしたら、いなくなったのでは。
そんなわけないと思いつつ、一気に不安が押し寄せる。
「た、辰也、いるよね…?」
「いるよ」
「ん…っ」
辰也の声の直後、唇にキスをされる。
舌が入ってきて、口内が犯される。
唇の端から唾液がこぼれた。
「いるよ、ここにね」
「た、辰也…」
辰也の言葉にじわりと涙が浮かんでくるけど、巻かれたネクタイに染み込んで流れない。
震える唇で辰也の名前を呼んだ。
「これ、取って…辰也の顔見えないの、やだよ」
そう辰也に懇願する。
目隠しされてたら、辰也がいるのかいないのかもわからない。
そんなのは怖いし、寂しい。
「ダメ」
「あっ!」
辰也の声と同時に、辰也の指が私の秘部に触れた。
辰也が今なにをしているのか、どういう体勢なのかまるでわからないから、次になにをするのか予想できない。
今だって、いきなり触れられると思ってなかった。
それが余計に体を敏感にさせているようで、体の芯が反応してしまう。
「だってこんなに感じてるし」
「あ、あっ、たつや…っ」
「いつもより感じてるんだろ?ああほら、入っちゃった」
「あ…っ!」
表面をなぞるだけだった辰也の指が、するりと私の中に入る。
中で蠢く指が、いちいち私を快感に導く。
「あっ、あっ、ん…」
「、可愛いよ」
「ん〜…っ」
辰也は耳元でそう囁くと、もう一度キスをした。
指の動きは止めないまま。
気持ちよくって、おかしくなってしまいそうだ。
「あっ、辰也、あっ、いっちゃう…!」
辰也の言うとおり、目隠しと拘束のせいなのか、いつもより随分感度がいいようで、自分でも驚くぐらい感じてしまっている。
早くもいってしまいそうで、きゅっと足で辰也の腕を挟んでしまう。
「ん…っ」
絶頂の直前で、辰也が指を抜く。
秘部が疼いて焦れてしまう。
「た、辰也…」
「これ」
辰也はネクタイ越しに、私の目を優しくなぞる。
「外すのと、挿れるの、どっちがいい?」
「!」
辰也の言葉に顔がかあっと熱くなる。
外してなんてもう言っていないのに、わざわざ私に選ばせるなんて、辰也は本当に意地が悪い。
「あっ!」
「ね、どっち?」
辰也の指が再び私の秘部をなぞり始める。
優しく弱く、決して私が達しないように。
「んっ、辰也…っ」
辰也は絶対に楽しんでいる。
鞄に入っていた手紙のことなんてもう頭の隅に追いやっているのだろう。
全部全部辰也の思いどおりなのが悔しい。
だけど、欲望には逆らえない。
「あっ、辰也…、挿れて…っ、いかせて!」
実を捩りながら陽いうと、辰也の妖しい笑顔が見えた気がした。
「これ、取らなくていいんだ?」
「…っ、いいから、…お願いっ」
そう言うと、辰也の指が私から離れる。
触れてる場所がないと、辰也がそこにいると感じられなくて、やっぱり怖くなってしまう。
「あっ…!」
「…」
キスの後、辰也自身が私の中に入ってくる。
辰也がそこにいると確かに感じられる。
「あっ、辰也…っ、好き…」
「オレもだよ」
「ったつや…っ!」
ひたすら辰也の名前を読んでしまう。辰也が見たい。辰也に想いきり抱き付きたい。
「辰也…っ」
視界が遮られても、辰也が今どんな表情をしているか目に浮かぶ。
私の脳裏には、辰也がしっかりと焼き付けられているのだ。
だけど、どんなに思い浮かべたところで違う。
辰也の顔が見たいのに、見れない。
近くにいるのは確かに感じるのに、わからない。
「辰也…、あっ、あっ!」
見えないのは嫌なはずなのに、体は心と裏腹に感じてしまう。
辰也が私の弱いところばかり責めるから、絶頂に導かれてしまう。
「あっ、ああ…っ!」
「…っ」
辰也の腕の中で絶頂を迎えると、辰也も直後私の中に精を吐き出す。
抜いてすぐ、辰也が目隠しと拘束を解いてくれる。
視界に辰也が現れて、安心して涙が零れた。
「辰也…っ」
ぎゅっと辰也に抱き付いた。
辰也がそこにいる。
やっぱり辰也が見えて、辰也に抱き付きたい。
辰也はよしよしと私の頭を撫でてくれる。
「…もうああいうの嫌だからね」
きっと辰也を睨んでそう言うと、辰也はとぼけた顔が明後日の方を見た。
「気持ちよさそうだったのに…」
「う…、で、でもやだ!」
いや、まあ、その。
確かによかったことはよかったんだけど、やっぱりこういうのは嫌だ!
「辰也の顔見えないの寂しいんだもん…。抱きつけないのも嫌だし」
「…じゃあ、わかった」
辰也はちょっと拗ねた顔をする。
…わかってなさそうな気がして、じっと辰也を見つめると、辰也は体を起こして体勢を変えた。
「あ」
辰也が私の毛布をかけると、そのとき風が舞ってテーブルにあった手紙が落ちた。
辰也がそれを拾い上げる。
裏に知らない男子生徒の名前。辰也はくるりとひっくり返した。
「……」
そこに書いてあった宛名は、私の前の席の女子の名前。
私の名前ではない。
「間違いみたいだね」
辰也はご機嫌な顔で私に笑いかける。
私は勢いよく起きあがった。
「辰也!」
この手紙が間違いなら、勘違いであんなことされた私って!
本当にもう、絶対こんなことさせない!
氷室くんと目隠し
15.02.26
感想もらえるとやる気出ます!
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