辰也の家でご飯を食べ終え、今は二人でテレビを見て歓談中。
ふと壁の時計を見るともういい時間だ。
「あ、もうこんな時間…」
「本当だ」
辰也も時計を見て私の言葉に同意する。
そのまま私のほうを向いて、にっこり笑う。
「そろそろお風呂入る?」
辰也の言葉にぽっと顔が赤くなる。
そう、今日は辰也の家に泊まる予定だ。
だから、この時間でも帰る準備をする必要はない。
「そんなに赤くならなくも。別に初めてじゃないんだから」
「だ、だって…」
確かにこの間も辰也のご両親が不在というのでここに泊まらせてもらったし、私の家に辰也が泊まったこともある。
だけど、お風呂はなんというか、少し別というか…。
なんだか、生々しい気がするのだ。それが少し恥ずかしい。
「一緒に入る?」
「えっ!?」
突然の辰也の言葉にオーバーリアクションで驚いてしまう。
一緒にお風呂!?
「そ、それはちょっと…」
「また?」
辰也は少し拗ねた声を出す。
辰也は何かというと「一緒にお風呂入ろう」と言ってくる。
それを私はずっと断り続けてきているのだ。
「だってお風呂って明るいし…」
「だからいいのに!」
辰也が明るいところでしたがるのはわかっていたけど、まさかびっくりマークをつけるほど強調されるとは思わなかった。
驚いてしまって辰也から少し離れた。
「ダメ」
「えっ」
「もう限界だな」
「きゃっ!?」
辰也は私の腕を掴むと、強引に抱き上げた。
お姫様抱っこというやつ。
恥ずかしくて辰也の腕の中で暴れると、辰也は少し慌てた顔をする。
「暴れると落ちちゃうよ」
「下ろして!」
「ダメ。もうお預けは限界」
辰也は暴れる私を鎮めるようにおでこにキスをする。
辰也の甘いキスに絆されそうになるけど、お風呂は本当に恥ずかしい…!
「た、辰也」
「…どうしてもダメ?」
辰也は眉を下げて捨てられた子犬みたいな顔をする。
私がこの表情に弱いのを知っている辰也は、絶対わざとこの表情を作っている。
そうわかっているのに。
本当に私はこの表情に弱い。
「う…」
「ね?」
反抗できなくなった私を見て、辰也はにっこり笑った。
器用に私を抱えたまま脱衣所のドアを開けると、ようやく私を下ろしてくれる。
「辰也、あの…」
「ん?」
「は、早く上がるからね…?」
それが私にできる小さな抵抗だった。
もうここまで来て「やっぱりダメ」は辰也が可哀想すぎる。
それに今までも、「一緒にお風呂に入りたい」という辰也の希望を悉く却下し続けてきたことに罪悪感はあったのだ。
辰也はいつも「お風呂に入るのは無理」という私の希望を聞き続けてくれた。
じゃあ、そろそろ私の番だ。
「……」
「……」
「えっ!?」
辰也はおもむろに服を脱ぎ始める。
素っ頓狂な声に驚いたのか、目を丸くして私を見る。
「だってお風呂に入るんだから脱がないと」
「そうだけど…」
辰也は恥ずかしがる素振り一つ見せずテキパキと服と脱いでいく。
最後の一枚、下着をぽいと脱衣籠に放り込んだのを見て私は目を逸らした。
「何度も見てるのに」
辰也がおかしそうに言うのが聞こえたけど、やっぱりベッドの上で見るのと、明るい場所で見るのは違う。
そもそもベッドの上でだって恥ずかしいのに、この場では尚更だ。
「も脱がないと」
「う、うん」
「脱がせてあげようか?」
「自分で脱ぎます!」
辰也に背を向けたまま、ブラウスのボタンを外す。
背中に辰也の視線を感じるけど、極力気にしないようにする。
「…」
次はキャミソール。
服の裾をつかんで、捲り上げる。
「た、辰也、あの…」
「ん?」
「あんまり見ないで…」
気にしないように、そう思ったけどやっぱり駄目だ。
痛いほどの辰也の視線が羞恥を煽る。
「あんまりが脱ぐところって見ないから。いつもオレが脱がせてるし」
辰也の言う通り、私は基本的に辰也の前で服を脱ぐという行為をしない。
こんなにじっくり見られる空間では初めてだ。
「初めての行為」は、当然恥ずかしいものなのだ。
「……」
次は靴下。そしてスカート。
脱衣籠に服が増えるたびに私の体を隠す布がなくなっていく。
「…っ」
下着姿というのも恥ずかしいもので、意を決して私はブラジャーのホックに手を掛けた。
もう何度もしてきた行為なのに、手が震えてうまくいかない。
「手伝おうか?」
「…大丈夫」
後ろから辰也の面白がるような声が聞こえてきた。
強がって答えたつもりだったのに、声が震えていて恥ずかしい。
苦労してようやくホックを外す。
肩から紐を外して、そっと籠にブラジャーを置いた。
次はショーツだ。
もうここまで来たらこの格好のほうが恥ずかしい。
私はショーツに手を掛けて、一気に脱ぎ切った。
「…んっ」
辰也は露わになった私の背中を指でなぞる。
ぞくりとした感触に、声が漏れてしまう。
「可愛い」
辰也が耳元で囁いてくる。
身を捩ると、辰也が後ろで笑った気がした。
「入ろうか。ずっとこのままじゃ風邪引いちゃう」
辰也は手を引いて私をバスルームへ導く。
左手で胸を隠しているけど、辰也はそれを咎めない。
恐らくこの私の行動すら楽しんでいるのだろう。
バスルームの床に足をつく。
お風呂に入ったらまず何をするんだっけ。
毎日していたことのはずなのに、沸騰しそうな頭では思い出せない。
「いつもどこから洗ってる?」
辰也は私の肩に手を乗せながら聞いてくる。
そうだ、まず体を洗うんだ。
「え、えっと、髪…?」
「そっか。よし」
辰也は私を座らせるとシャワーを手に取る。
少し自分の手で温度を確かめた後、私の髪を濡らす。
シャンプーを少し手に取って、私の髪を洗い始めた。
「ん…」
美容師さんにやってもらうより少し雑な洗い方だ。
だけど、辰也に髪を洗ってもらうのは思いのほか心地いい。
「かゆいところはございませんか」
「ふふ、大丈夫です」
美容室のようなやりとりをして、思わず笑みが零れる。
一緒にお風呂、恥ずかしいは恥ずかしいけど、楽しいかも。
シャンプーを洗い流して、リンスも終えた。
次は辰也の番だ。
「私も洗ってあげるね」
今度は辰也を座らせて、私が辰也の髪を洗う。
辰也の髪はサラサラで、触っていてとても心地いい。
するりと指が抜けていく。
「人に洗ってもらうのって気持ちいいよね」
「え!?誰に!?」
私以外の誰かに洗ってもらったことあるんだろうか。
辰也の口調は「昔親に洗ってもらった」という雰囲気じゃない。
慌てた声を出すと、辰也は笑った。
「美容師さん」
「あ、そっか…」
ついさっき自分でも美容室のやりとりみたいと思ったのに、何言ってるんだろう私…。
「はい、終わり」
リンスを洗い流して、辰也の頭をぽんと叩く。
髪を濡らした辰也は色っぽい。
「次はこっちだ」
辰也は私の胸の間からお腹までをなぞる。
すっかり楽しい気持ちに染められていたけど、一気に羞恥心が蘇ってくる。
「あ…」
「オレが洗う?それとも洗ってくれる?」
「わ、私が洗う!」
辰也に洗われるより、洗うほうが恥ずかしくない気がする。
そう思ってバススポンジを手に取った。
「こら」
「え?」
「手で洗わないと」
「ええ!?」
辰也はスポンジを私から奪うと、ボディソープを手渡す。
顔から血の気が引いているような、顔に血が集まっているような、自分が蒼い顔をしているのか赤い顔をしているのかわからない。
「素手で…?」
「当然」
辰也はにっこり笑う。
あ、これ、逃げられない。今までの経験からそう思った。
「は、はい…」
敬語で返事をすると、辰也はくすりと笑った。
もう仕方ない。やるんだ、私!
「…失礼します…」
ボディソープを手に取って、辰也の肩に手を当てる。
ぬるりと手が滑っていく。
「…っ」
なんだか、想像以上にいやらしい感じだ。
肩から腕に滑らせて、できるだけ手早く、でも丁寧に洗っていく。
「後ろ、向いて」
辰也を後ろに向かせて、背中を洗う。
大きな背中だ。
先ほど手に取った分では足りなくなって、もう一度ボディソープを取る。
背中から腰、その下に向かう。
お尻…って、洗わなきゃいけないよね…もちろん…。
最中、辰也が私のお尻に触れることはあっても、その逆は滅多にない。
なんだか変な感じだ。
「ん…」
今度は足を洗っていく。
辰也の体は全体的に筋肉質で、私の体とは違う。
当然のことだけど、男の人だと実感してドキドキする。
「…前、向いて」
もう一度辰也を前に向かせる。
今度は胸から順に洗っていく。
「…あの…」
「ん?」
「ここも、洗わなきゃだよね…?」
私が言うのは、お腹の下にある場所のこと。
辰也自身のことだ。
洗わなきゃいけないのはわかってるけど、できれば避けたくて聞いてしまう。
「の中に入るところなんだから、綺麗にしないと」
「…っ」
当然のように言われ、顔が赤くなる。
わかってる。けど、恥ずかしい。
「じゃあ…洗います」
ドキドキしながら膝をついて、辰也のそれを目の前に見据える。
目を逸らしたくなるけど、そういうわけにはいかない。
「ん…」
それに触れて、洗うためにこすると辰也が声を漏らす。
ボディソープで滑りがある分、フェラチオの前に触れるときよりいやらしく感じる。
「は…っ」
辰也の息が漏れる。
あ、まずい。
そう思って手を離した。
「…?」
「あ、だって…」
「ちゃんと最後までして」
辰也の言う「最後」は、ちゃんと洗い切れという意味ではない。
それを察した立ち上がって私はシャワーを手に取った。
上からボディソープを洗い流していく。
綺麗に流せたら、次はもう一つ。
もう一度辰也の前で膝をついた。
「ん…」
辰也のそれに触れる。
今度は洗うためじゃない。
「」
辰也に促されて、すでに勃ち始めている辰也のそれを口に含んだ。
口でするのは、何度しても慣れない。
やりたいかやりたくないかと聞かれれば、普段ならやりたくないと答えると思う。
だけどこういう雰囲気になると、いつも私を気持ちよくしてくれる辰也に、少しでも返したいと思うのだ。
「ん…っ」
辰也の声がバスルームに響く。
裏筋を舐めて、根元のほうに手を添える。
チロチロと先のほうを舐めると、辰也が私の頭を掴んでくる。
上目遣いで辰也を見たら、目が合ってしまった。
「…っ」
辰也の感じる顔を見て、嬉しいという思いと、羞恥がよぎる。
私は手の動きを早めた。
「…っ、はあ…っ!」
辰也に気持ちよくなってほしくて、必死に彼自身を愛撫する。
自分じゃわからないけど、最初の頃よりうまくなったはずだ。
辰也がそう言ってくれるし、辰也がどうされればよくなるのか、わかってきたような気がする。
「…、イク…っ」
辰也がぐいと私の頭を掴んで、口から自身を引き抜く。
その瞬間辰也は射精を迎え、吐き出された精は私の顔にかかった。
「ああ、ごめん。汚しちゃった」
辰也は私の頬についた精を指で掬うと、私の口元へ運ぶ。
条件反射のようにその指を咥えた。
「ん…」
嫌な味が口に広がる。
辰也のことは大好きだけど、この味だけは慣れない。
「今度はオレが洗ってあげるよ」
辰也は私の両脇に手を差し込んで、私を立ち上がらせる。
「ちょっともったいないけど」
顔についた精を洗い流すと、辰也は残念そうな顔をする。
これが男のロマンというやつなんだろうか。
「じゃ、痛かったりしたら言ってね」
辰也は先ほどの私と同じように、ボディソープを手に取る。
首筋を優しく撫でられて、身を捩ると辰也が笑った。
「動かないで」
「だって…」
辰也は私と同じように肩から腕、背中からお尻、足を洗っていく。
辰也の手の動きはやたらといやらしくて、何度も声を漏らしてしまう。
「や…っ」
「ぬるぬるしてるの、いいね。すごくいやらしいよ」
「は…っ」
辰也は足の指の間まで丁寧に洗っていく。
私は立って片方の足を辰也に投げ出して、辰也は跪いている。
辰也が私に服従しているようなポーズなのに、主導権は完全に辰也だ。
「ん…っ」
「可愛い」
辰也は立ち上がると、今度は胸に指を滑らせる。
滑りのある手のひらで乳房を揉まれる。
指がその先端を掴んだ。
「あっ!」
「可愛い声だ」
「た、辰也、それ…っ」
「ん?」
「全然、洗ってない…っ」
せめてもの抵抗で、辰也の手の動きが体を洗うものじゃないと指摘する。
無駄な抵抗だとはわかっているけど、このままじゃ全部辰也の思う通りだ。
「洗ってるよ?」
「あっ…!」
「大事なところは、ちゃんと綺麗に洗わないと」
辰也は両方の胸を愛撫する。
絶対に洗ってない。だけど、私はもう何も言えない。
「ん…」
辰也は右手で胸を触ったまま、左手でお腹に触れていく。
普段はくすぐったいだけなのに、今は快感に変わってしまう。
「ひゃ…っ」
辰也は私の足の間に手を滑りこませる。
表面をこすられて、今までの漏らすような声じゃなく、はっきりとした喘ぎ声が出る。
「あっ、あっ!」
「これ、想像以上にいやらしいね」
「あっ、ダメ、あっ!」
ボディソープで濡れた手を滑らせられる。
いつも以上に滑りがよくなって、音もより響き渡って、辰也の言葉に同意せざるを得ない。
「あっ!」
快感が強くなってくると、辰也はふっと指を離してしまった。
「た、辰也…」
「だって洗うだけだろ?さっきも洗ってないって怒られたし」
「!」
かあっと顔が赤くなる。
ここまでしておいて、辰也は。
「ほら、こっち」
辰也はシャワーでボディソープを洗い流す。
シャワーだけじゃなく、手で丁寧に触れて洗い流していく。
それだって全部快感になってしまっているのに。
「辰也…」
「ん?」
辰也は意地悪な顔で微笑む。
辰也は本当に意地悪だ。
いつも私を追い詰めて、私から求めさせる。
「…洗わなくて、いいから」
「うん」
「…ちゃんと触って…」
ぎゅっと辰也に抱き付いてそう言うと、辰也は私の腰に手を回す。
そのまま、右手を下におろしていく。
お尻の割れ目をなぞって、前へ指を滑らせていく。
「ん…っ」
「ここ?」
「…そこ…っ」
辰也を抱きしめる力を強くしてそう言えば、潤んだ眼の端で辰也が笑うのが見えた。
辰也の指が私の秘部をなぞる。
「あっ!」
「ここを?どのくらい?」
「いっぱい…っ、いっぱい触って…!」
私の言葉に気をよくしたであろう辰也は、指を中に滑り込ませる。
ぐちゅぐちゅと水音がバスルームに響く。
バスルームはよく響くから、部屋よりずっと鮮明に聞こえる。
「あ、あっ、んっ、辰也っ!」
辰也は器用に中で動かしたり陰核を弄ったり、私のそこを丁寧に愛撫する。
絶頂を迎えそうになった寸前、辰也はそこから指を離してしまう。
「あ、辰也…」
これ以上お預けはもう無理だ。
辰也の顔を見上げると、辰也は顔を寄せて耳元で囁いた。
「もっといいものをあげるよ」
その言葉だけで秘部が疼いてしまう。
卑猥な自分の体を恥ずかしく思いつつも、それでも欲望は止められない。
「ここ、手付いて」
辰也はバスマットを引くと、私を四つん這いにさせる。
「痛くない?膝とか」
「ん、平気…」
柔らかいマットのおかげでついた手も膝も痛くない。
ふと顔を上げると、とんでもない事実に気付く。
「辰也、やだ…っ」
「ダメ」
「あ、ああ…っ!」
私の制止の声も聞かず、辰也は私の中に自身を挿入させる。
鏡に映った辰也の顔は、心底楽しそうだった。
そう、目の前には鏡がある。
バスルーム用に曇り止めがされたそれは、鮮明に私たちの行為を映している。
「や、やぁっ!」
「ほら、ちゃんと見て」
「やだ…、あっ!」
顔を目の前の鏡から逸らすと、辰也が私の顎を持って無理矢理鏡のほうに向かせる。
「や、やだ、無理、やだ…っ!」
「その割にここは締め付けてくるよ」
「違う、あっ、違うの…っ!」
「ほら、こんなに溢れてきてる」
否定の言葉を紡いでも、辰也は体勢を変えようとはしてくれない。
それどころか羞恥を煽るような発言をしてくる。
「や、やあ…っ」
顔を背けられないから、ぎゅっと目を瞑る。
自分のこんな姿は見ていられない。
「こら、目開けて」
辰也は動きを止めて、私の瞼に触れる。
「だ、って」
「開けなきゃ動かないよ」
「…っ」
「ここで止めようか」
「!」
意地の悪い辰也の言葉。
顔を辰也のほうに向けると、辰也は嗜虐心溢れる目で私を見ている。
「…辰也…」
「……」
もう何を言っても、辰也は考えを変えない。
私の表面にある羞恥心と尊厳は、奥底の最低な欲望には勝てなかった。
「辰也…」
ゆっくり、辰也のほうに向かせていた顔を前に向ける。
目に飛び込んでくるのは、鏡に映った泣きそうになっている、いや、泣いている私の顔だ。
「あっ!」
辰也は嬉しそうな顔をして律動を再開させる。
反射的に目を瞑ろうとしてしまうけど、必死に堪えた。
鏡の中の私は、涙を零しながらだらしなく口を開けて、口の端からよだれを零している。
私はいつも、セックスの最中にこんな顔を辰也に見せているのか。
可愛いと辰也は言うけど、全然可愛くなんてない。
こんな顔を晒していると思うと死にたくなってくる。
それなのに、この状況にいつも以上に感じている自分にも気付いている。
「あっ!あっ、ん、あ…っ!」
「、気持ちいい?」
「あっ、いい、いいの…っ!」
この状況で感じるなんて変態以外の何者でもない。
そんな自分が恥ずかしいのに、そう思うたびに秘部から愛液が溢れ出す。
快感が止められない。
「辰也っ、あっ、あっ!やあ…っ!」
「…っ」
「あっ、イク、ん、イク…っ!」
限界が迫っていることを伝えると、辰也はまた顎を持って私の顔を固定する。
イク顔を自分で見ろということか、バックでも辰也が鏡越しにその顔を見られるようにするためか。
「ああ…っ!」
辰也が私の感じる場所を突いた瞬間、私は絶頂を迎えた。
さすがに堪え切れず目を瞑ったので、その瞬間は見ずに済んだ。
「ん…っ」
辰也も直後私の中でイって、精を吐き出した。
疲れ果てた私はマットの上に倒れこんでしまった。
*
「……」
「、怒ってる?」
事の後、辰也に後ろから抱きかかえられるようにして浴槽に入っている。
頬を膨らます私に気付いたのか、辰也は心配そうな声で聞いてきた。
「…だって」
「?」
「一緒にお風呂、初めてなんだから…もっとこう、普通の感じって言うか…」
なんで「初めてのお風呂」であんなアブノーマルなことやらされなくちゃいけないんだ。
最初なんだから、もっとこう…!普通の感じで!優しいスローセックスみたいになるかと思ってたのに!
「ごめんね」
「……」
辰也はこういうとき、いつも「ごめんね」って言ってくるけど、いつも謝ってない。言ってるだけだ。
謝罪の言葉を聞いた後も、未だ頬を膨らませる私を見て辰也がため息を吐いた。
「…だってあんなに感じてたのに」
「!」
ボソリと辰也が呟いたのに、かあっと頬が赤くなる。
辰也を叩こうと振り向いたら辰也も拗ねた顔をしていた。
「バカ!辰也のバカ!」
「だって気持ちいいって言ってあんなにいい顔でイって」
「!!バカー!」
氷室くんとお風呂
14.10.19
氷室くんと○○シリーズ第二弾
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