「あ〜〜!もうやだ!!」 「落ち着けって」 仕事が終わった金曜の夜。 私は修造の部屋で思いっきり仕事の愚痴を叫んでいた。 「もうやだ!何が嫌って、人!!」 「おー」 「あの人本当苦手…会いたくない…」 仕事内容が嫌というか、職場の人間関係が嫌。 就職する前の学生時代、職場の人間関係に悩む人がいるとは聞いていたけど、まさか自分がこんなに悩むことになるとは…。 「はあ…」 「チョコ食うか?」 「食べる!」 ため息を吐くと修造がチョコを差し出してくれる。 こういうとき、修造は優しい。 ただの愚痴なら「うるせー」って一蹴されるけど、私が本気で悩んでいると知っているから、話を聞いて、相槌を打って、私の好きなものをくれる。 「はー…ずっとチョコ食べて過ごしていたい…」 「太るぞ」 「わかってます!」 そう言って修造のベッドにダイブした。 「おい、どうした」 「……」 修造に優しくされると、余計に沁みる。 なんていうか、つらい。 「…疲れた」 一週間頑張った。 でも、また二日休んだら仕事だ。 もう嫌だ。できることなら、二度とあそこに行きたくないぐらいに。 「お疲れさん」 よしよしと頭を撫でられる。 修造の方が仕事忙しいのに、自分を情けないと思いつつ、つらいものはつらいのだから仕方ない。 「…辞めたい…」 「辞めれば?」 ぽつりと呟くと、修造がすぐに返してきた。 「…辞められないよ。生活してかなきゃいけないもん」 生憎仕事を辞めても、奨学金返済してたから貯金がはそれほどない。 実家に頼るのも難しいし、転職するのはせめてもう少し貯金が溜まってからだ。 「オレお前ひとりぐらい養えるけど」 修造の突然のセリフに、私は言葉をなくす。 「…は」 「嫌って言うなら、あれだけど」 私に背を向けて、言う。 「え、ちょっと、待って!」 待って、そう思ってベッドから飛び起きる。 それは。その言葉の意味は。 「そ、それは、どういう意味で」 ベッドから降りて修造の前に座ってそう聞くと、修造はぷいとそっぽを向いてしまった。 「……」 「…あー…、わかるだろ」 「わ、わかりません!」 修造の顔は、赤い。 彼の前で正座して、顔をじっと見つめる。 修造は目をそむけたまま、赤い顔のまま、言う。 「…結婚するかってことだよ」 修造の言葉を聞いて、涙が零れる。 思いっきり彼に抱き付いた。 「する!うれしい!」 「…おー…」 修造のTシャツに涙と鼻水がついちゃう。 ごめんね。ちゃんと後で洗濯するから許してね。 「ふふ。…でも私、もうちょっと仕事頑張るね」 「無理すんなよ」 修造の腕の中で幸せを噛みしめる。 今なら、もう少し頑張れそうな気がするよ。 ( ああ、だから生きていける ) 14.07.10 10周年プロポーズ企画! 2度目の誕生日おめでとう! 感想もらえるとやる気出ます! タイトル配布元→capriccio |