「あー…ごめん、ちょっといい?」 蔵とのデートの帰り。 足に痛みを感じて見てみると、靴擦れしてしまってる。 「うわ、靴擦れか」 「うん」 「おんぶしたろか」 「そこまでは大丈夫です」 痛いことは痛いけど、そこまでじゃない。 ただちょっと絆創膏貼りたい。 「ちょっと休憩しよか。公園にベンチあったやろ」 ちょうど目の前には公園がある。 そこで手当てしがてらちょっと休もう。 * 「痛くないん?」 「ん、そんなにはね」 蔵が公園の前にある自販機で紅茶を買ってきてくれた。 冷たくて、気持ちいい。 鞄から絆創膏を出して、踵に貼る。 デートだからって張り切って新しい靴を卸したらこれだ。 ちょっと慣らしておけばよかったかな。 「ここ、懐かしいなあ」 「ね」 蔵は公園で遊ぶ子供たちを懐かしそうな目で見つめる。 ここは昔、私と蔵がよく遊んでいた公園だ。 「変わっとらんなあ」 砂場も、鉄棒も、ジャングルジムも、あのときのままだ。 幼馴染だった私たちは小さな頃からずっと一緒にいて、「大好き」って周りに恥ずかしげもなく言っていた。 少し大きくなったら周りに大っぴらにいうことはなくなったけど、想いは今も変わらないままだ。 私も、蔵も。 「昔はスニーカーかサンダルしか履いとらんかったのになあ」 蔵は私のパンプスを見て言う。 いつの間にかパンプスやブーツを履くようになった。 私も蔵も、大人になった。 「…なあ、」 「ん?」 「そろそろ、結婚せえへん」 蔵は少し顔を赤らめて、言う。 驚いて持っていた紅茶を落としそうになる。 「え、えっ!?」 「そない驚かんでも」 「驚くわ!だって突然」 「もうそういう年やん」 確かにそういう年ではあるし、私も考えたことがないと言ったらウソになるけど。 まさかこんなタイミングで言ってくるとは思わなかった。 「…喜んで」 絞り出すような声で、私は言った。 小さいころから変わらない想い。 この人と結婚するんだと、物心ついたときから、ずっとずっと思ってた。 「あー…緊張した」 「したん?全然見えへんかった」 「そらガッチガチに緊張したまま言ったらかっこ悪いやん」 笑いながらそう言うので、私もつられて笑った。 「でも意外。蔵はもっとムードあるところでプロポーズするかと思ってた」 「迷ったんやけどね。に一番最初にプロポーズしたんもこの公園やったから」 蔵に言葉を聞いて、固まる。 それは、昔のことだ。 幼稚園のとき、蔵とこの公園の砂場で遊んでいたときのこと。 「大きくなったら結婚しような」と言われ、無邪気に「うん!」と答えたときの話。 「あんときから俺の気持ちは、なんも変わってないんやで」 蔵は優しい顔で、言う。 私は蔵の手を握った。 「私もだよ」 繋いだ手は、大きくなった。 でも、二人とも、想いだけは変わらない。 満ち足りた日常 14.08.05 10周年プロポーズ企画! これに付随した続き物があるんですがそれはまた後日 感想もらえるとやる気出ます! タイトル配布元→capriccio |