「あー…ごめん、ちょっといい?」

蔵とのデートの帰り。
足に痛みを感じて見てみると、靴擦れしてしまってる。

「うわ、靴擦れか」
「うん」
「おんぶしたろか」
「そこまでは大丈夫です」

痛いことは痛いけど、そこまでじゃない。
ただちょっと絆創膏貼りたい。

「ちょっと休憩しよか。公園にベンチあったやろ」

ちょうど目の前には公園がある。
そこで手当てしがてらちょっと休もう。





「痛くないん?」
「ん、そんなにはね」

蔵が公園の前にある自販機で紅茶を買ってきてくれた。
冷たくて、気持ちいい。

鞄から絆創膏を出して、踵に貼る。
デートだからって張り切って新しい靴を卸したらこれだ。
ちょっと慣らしておけばよかったかな。

「ここ、懐かしいなあ」
「ね」

蔵は公園で遊ぶ子供たちを懐かしそうな目で見つめる。
ここは昔、私と蔵がよく遊んでいた公園だ。

「変わっとらんなあ」

砂場も、鉄棒も、ジャングルジムも、あのときのままだ。
幼馴染だった私たちは小さな頃からずっと一緒にいて、「大好き」って周りに恥ずかしげもなく言っていた。
少し大きくなったら周りに大っぴらにいうことはなくなったけど、想いは今も変わらないままだ。
私も、蔵も。

「昔はスニーカーかサンダルしか履いとらんかったのになあ」

蔵は私のパンプスを見て言う。
いつの間にかパンプスやブーツを履くようになった。
私も蔵も、大人になった。

「…なあ、
「ん?」
「そろそろ、結婚せえへん」

蔵は少し顔を赤らめて、言う。
驚いて持っていた紅茶を落としそうになる。

「え、えっ!?」
「そない驚かんでも」
「驚くわ!だって突然」
「もうそういう年やん」

確かにそういう年ではあるし、私も考えたことがないと言ったらウソになるけど。
まさかこんなタイミングで言ってくるとは思わなかった。

「…喜んで」

絞り出すような声で、私は言った。
小さいころから変わらない想い。
この人と結婚するんだと、物心ついたときから、ずっとずっと思ってた。

「あー…緊張した」
「したん?全然見えへんかった」
「そらガッチガチに緊張したまま言ったらかっこ悪いやん」

笑いながらそう言うので、私もつられて笑った。

「でも意外。蔵はもっとムードあるところでプロポーズするかと思ってた」
「迷ったんやけどね。に一番最初にプロポーズしたんもこの公園やったから」

蔵に言葉を聞いて、固まる。
それは、昔のことだ。
幼稚園のとき、蔵とこの公園の砂場で遊んでいたときのこと。
「大きくなったら結婚しような」と言われ、無邪気に「うん!」と答えたときの話。

「あんときから俺の気持ちは、なんも変わってないんやで」

蔵は優しい顔で、言う。
私は蔵の手を握った。

「私もだよ」

繋いだ手は、大きくなった。
でも、二人とも、想いだけは変わらない。











満ち足りた日常
14.08.05

10周年プロポーズ企画!
これに付随した続き物があるんですがそれはまた後日


感想もらえるとやる気出ます!


タイトル配布元→capriccio