今日は何人斬ったのか。今まで何人斬ったのか





赤く染まった






「お疲れさまです」

仕事が終わって、自分の部屋に入ろうとしたとき、廊下の端にいる女中のが話しかけてきた。たまたま通ったのか待ってたのかわからないが、何て答えていいかわからず、ああ、と適当に流して部屋に入った。
は人の死体なんて見たことはないだろう。それどころか動物の死体だってきっと数えるほどだ。
俺は、今まで何人の死体を見てきたんだろう。不貞浪士は数え切れないし、仲間の死に様だって見てきた。戦って殺した奴に罪悪感なんて覚えないが、の顔を見ると時々思う。

(俺は、人斬りなんだ)

この手は血にまみれてる。人を殺せば殺すほど、幕府のやつらは喜ぶが、一般市民はむしろ俺たちを怖がっている。町で何も考えないで暮らしてるようなやつらに何を思われても構わないが、は、どうなんだ。あいつも怖いだとか、そんなことを思っているのか

「土方さん?」

そんなことを考えていると、襖の向こうからの声がした。

「どうした」
「失礼します」

そう言ってが入ってくる。
「何だか、元気がなさそうだったので」

何でこいつは、こうやって俺のことがわかるのか。驚いて、思わず「そんなことない」と否定してしまった。

「…、なら、いいんです」

「はい?」
「俺たちは、怖いか」

は驚いた顔をして、俯いて、小さな声で言った。

「幕府に逆らう人だからって、殺していいのかどうかとかわかりません。けど」

俯いた顔を上げて、は笑顔で言う。

「皆さんのことは、好きです」

なら、それならいいんだ。こんな人斬りの俺たちを、好きといってくれるなら

「俺のことはどうなんだ」

は顔を赤くして、また俯いた。
「…知ってるくせに」
「言ってくれ」


今度は笑顔ではなくて、照れながら小さく口を開いた。

「…愛してます」

の手を引いて、抱き寄せる。
「土方さん、やっぱり何かあったでしょう」
「何もねぇよ」
「何かあったら、いつでも言ってくださいね」

抱きしめたは細くて小さくて、こんな血だらけの手でお前を抱きしめる資格なんてないのはわかってる。

でも、今は、今だけは別にいいだろ?

























05.11.10
これは書いてみたかった!
土方さんって銀魂で1,2を争うほどシリアスが似合うと思ってます。