死ぬ間際には生きてきた間のことを思い出すというけれど本当だったんだ。たくさんの思い出が頭をよぎっては消えていく。 ゆっくり目を開くと、土方さんが私を抱きしめている。 「」 土方さん、私はもうすぐ死ぬんですね。今まで死にそうになったことなんてないけれどわかる。たくさん血が出てる。もう痛いとかいう感覚じゃない。立ち上がることさえできなくて。 「土方さん」 何でこんなことになってしまったんだろう。戦が起こって、それに私は巻き込まれて。何で戦が起きたのか、何で私は巻き込まれたのかも思い出せない。思い出すのは土方さんとの思い出ばかり。春も夏も秋も冬も、一緒にいた。初めて会ったのは夏の日で、想いが通じたのは冬だった。最初にキスしたときのことも、手を繋いだときのことも、一つになったときのこともまだ覚えてる。 「土方さん、私は」 「もう、喋るな」 「いいたいことが、あるんです」 どうしても、言いたいの。 「好きです、愛してます」 土方さんの手が私の頬に触れる。 「ああ、俺もだよ」 土方さん、私は、戦のあるこの世の中に生まれたことを後悔したりしてません。だってあなたに出会えたから。あなたに出会えて、あなたのことを愛して、あなたに愛してもらえて、それ以上望むものなんてあるわけがない。もっと一緒にいたい、なんて望まない。あなたの腕の中で死ねるなんて、私は世界一の幸せ者だ。最期に感じたぬくもりが、あなたのぬくもり。最期に聞いた声が、あなたの声。 もっと生きていたら、もっと幸せなことがあったのでしょうか。きっと、それはないんでしょう。私は、あなたに愛してもらえたことで、すべての幸せを使い切ってしまったんだ。だから、私はこのまま死ぬの あなたの腕の中で死ぬの。 「土方さん」 「」 「私は、あなたのことを、ずっと見ています」 土方さんが私にキスをする。 最期に感じたぬくもりは、あなたの唇。 すごく、すごく、 しあわせでした 06.08.28 |