黒板消しを叩いたらぶわっと白い煙が舞った。クリーナーでちゃんときれいにして、黒板を拭いた。後ろでさらさらと土方くんが日誌を書く音がする。あ、今シャー芯折れた。カチカチって、音がする。あーそんなに芯出したらまた折れちゃうよ。どんな字、書くのかな 見てみたいな。ちょっと聞いてみようかな。でもな、まだちゃんと話したことなんてないし。最初の会話がそれってどうよ。

「おい、日誌書けたぞ」
「え、あ、ありがとう」
「なんだ、まだそっち終わってねぇのか」
「上のほう、届かないんだよ」
「じゃ、貸せ」

私が持ってた黒板消しを奪って上のほうを軽々消す。いいなぁあのくらい大きかったらいろいろ便利なんだろうなぁ。…ん?あれ?

「…土方くん、煙草のにおいがする」
「…気のせいだろ」
「気のせいじゃないよ。うちのお父さんと同じにおい」
「親父くさいってことじゃねぇの?」
「そうじゃないよ」

土方くんのシャツの裾をつかんでにおいを嗅ぐ。うわ、ちょっと私大胆!

「…やっぱり、煙草のにおいだよ」
「だから気のせいだって。風紀委員が煙草なんて吸うはずねぇだろ?」
「本当に?」

確かに煙草のにおいなんだけどなぁ。

「別に先生に言ったりしないよ」
「だから吸ってねぇって」
「……」
「……」
「えいっ」
「うわってめ!何すんだ!」

私は机の横に置いてある土方くんの鞄を奪って中を漁った。

「ほらー、やっぱりあるじゃん」
「……」

そこには煙草一箱。

「煙草っておいしいの?」
「人によりけりじゃねぇの?」
「ふーん…」
「つーか返せ」
「あ、ごめん」

煙草を鞄の中に戻して、土方くんに返す。

「煙草持ってきて、どこで吸ってるの?」
「屋上。あそこいつも誰も来ねえから」
「へー…」
「お前来んなよ」
「えー…」
「煙草のにおい、うつるだろ」
「あ、そっか」
「んで、今日のことも誰にも言うな」
「はーい!」
「じゃ、俺これ出して帰るから」
「うん、バイバイ」


土方くんは日誌を持って教室から出てく。うわー昨日まで話したこともなかったのにね。いきなり二人だけの秘密共有だよ。あ、やばい、ちょっと顔赤いかも。土方くん、今日のことなんとも思ってないのかな。…思ってなさそうだな…。私は、今以上に土方くんと仲良くなりたいのに<。よーし、じゃあ明日、屋上に行ってみようか



06.06.05