人間は運動の直後や緊張したとき、声が少し高くなるらしい。だったら、好きな人と話すときって声が高くなるんでしょうか。 ふと浮かんだ疑問を近くにいた土方さんにぶつけてみた。すると、土方さんは何も喋らずこちらを見た。 「……」 「そんな呆れた顔で見ないでください」 ああ、やっぱり土方さんに話したりするんじゃなかった。土方さんが「大丈夫か?」という目で私を見てる。 「…変なこと聞いてすいません」 「いや、別に変だとは思わねぇけど…何で俺に聞くんだよ」 「たまたま近くにいたからです」 「ならいいけどよ」 そう言って土方さんは煙草に火をつける。さっきまで吸ってた煙草は私が変なことを聞いたせいでお茶の中に落としてしまったのだ。お茶も煙草ももったいない、重ね重ねすいませんという言葉がぴったりになってしまいそう。 「じゃあ、俺もう行くから」 「はい、行ってらっしゃい」 「…なぁ」 「なんですか?」 土方さんは襖を半分だけ開けたところで立ち止まった。 「お前の声、いつもより高い気がすんだけど気のせいか?」 突然のことに、私は目を丸くして固まった。ふう、と息を吐いて、ようやく言った。 「気のせいですよ」 「…そうか」 土方さんはそう言って襖を閉めて出て行った。もちろん私の声が高いのは気のせいではないのだけど、土方さんの声が高かったのも、気のせいかな。少しだけ、期待を膨らませても構いませんか? 07.04.02 |