「もう冬ですね……」 窓の外を見ながらふと呟いた。道を行く人の吐く息が白くて、すっかり冬になってしまったなぁと思う。 「まだ秋だろ」 土方さんは私の隣に座って、窓の外を見ながら言った。 「こんなに寒いのに?」 「まだ11月だろ」 「でもみんなコートとか着てますよ」 「9月から11月が秋だ」 「…土方さん強情ですね」 「お前もな」 「…寒い」 私は暖房の前に移動して、窓の近くにいて冷えてしまった体を温める。 「あー、あったかい」 「…そんなに寒かったのか」 「ええ。だからもう冬とか言ってたんですよ」 「……」 土方さんは私の名前を呼ぶと、私を抱きしめて温めるように背中をさすった。あ、私が寒いって言ったから温めてくれてるのか。そう思うと、自然と笑みがこぼれた。 「…土方さん」 「ん?」 「あの、まだ寒いです」 「………」 「だから、ずっとこのままでいてくださいね」 本当はもう暖房のおかげで温まってるんだけど。もう少し、このままでいたいから。土方さん、あと少し、嘘に気づかないふりをして。
もうすこしだけ、 騙されたふりをして 06.11.21 |