朝学校に着くと、「さんへ」と書かれた封筒が下駄箱に入っていた。
うわぁもしかしてラブレター?もらったのなんて初めてだよ!と思いつつ中を見ると昼休みに屋上に来てくださいとのこと。
やっぱりそうなんだと思いつつドキドキしながら屋上へ向かった。
そこにいたのは去年同じクラスだった木下くん?木村くん?どっちだっけ。
そんな深く記憶に刻まれてない人の姿。彼は私を見た瞬間名乗ることなくいきなり告白をしてきた。

「他の誰が君を思うより俺は君が好きだ」

そう言われて私は目を丸くした。
そんなことを言うのは漫画の中だけだと思ってたのに!本当に言う人がいるなんて。しかもこんな身近に!
悪いけれども私の返事は当然「ごめんなさい」だ。
だって名前もしっかり思い出せないような人に、漫画のようなセリフを言われたってちっともときめかない。というかむしろ引く。
木下くんだか木村くんだかは明らかに無理して笑って屋上から出て行った。
ごめん木下くんか木村くん。せめて名前を知りたかったよ。


「今の誰?」

彼が出て行くのを見送った後、突然上から声が降ってきた。屋上の貯水タンクの上だ。
そこにいるのは、同じクラスの藤真。

「聞いてたの?趣味悪いよ」

「お前らが勝手にそこでいちゃつきはじめたんだろ」

「いや、いちゃついてないんだけど」

「何で断ったんだよ」

「え、だってあんな告白セリフ引くじゃん」

「他の誰が思うより、ってやつ?」


もちろんそれだ。
これは私の勝手な考えだけど、人を好きになる気持ちをというのは比べるものじゃなくて
ていうか比べようがないし、第一それを他と張り合ってどうするのよ、といつも思ってるし。
あ、やば、語っちゃった。ちょっと恥ずかしいな。


「へぇ、お前意外と真面目に考えてるんだな」

「意外とって何よ」

「ふーん…」


藤真はじっとこっちを見つめる。そんな目で見られるとドキドキしちゃうんですけど。


「でも、俺はあいつがを思ってるよりのこと好きだけど」

「…は?」


何を言い出すかと思いきや。私は高鳴る鼓動を落ち着けようと深呼吸をした。
まさか藤真がそんなことを言うわけがない。というか今さっきそんなこと言われてもうれしくないと言ったばかりだし。


「は?じゃねーよ本気だよ」

「ちょっと冗談はそこまでにしようよ」

「おいおいいくら俺でも本気の告白をスルーされたら傷付くっつーの」


え、ちょ、本気なの?ちょっと待ってよそんな告白うれしくないと言ったばかりじゃない。いやうれしくないとは言ってないっけ?
とりあえず木下くんだか木村くんだかにそう言われたときより私の顔が明らかに赤くなっていて。


「俺が言ってもときめかない?」

「…少しだけときめきました」



ごめん木村くんだか木下くん。
あなたには引いたけど藤真にはときめいてしまいました。

それはきっと、私が藤真のことを、他の誰より強く思っているから。




















誰より僕は君を思う
07.05.21