「、じゃーね」

     「うん、また明日ね」


     水曜の放課後、生徒が帰り支度を整えている間、日直の私は一人日誌を書いていた

     私の机の前を友人たちが通り過ぎて、その度「じゃあね、また明日」と挨拶をする


     日誌書き終わったら黒板綺麗にしなきゃなぁと思いつつ日誌の最後の欄を埋めていった


     「、帰らないの?」


     黙々と最後の”連絡事項”の欄を書いていると、隣の席の藤真が話しかけてきた


     「日直だから。あと少しで終わるけど」

     「へぇ、大変だな」

     「手伝ってあげようとか優しい気持ちはないの?」

     「ない、これから部活だし」


     やっぱり、藤真はこういうやつだ

     その容姿から勝手に優しいと思い込んでる子が多いのだけれど

     本当のこいつはとんでもないわがまま少年だったりする


     なんで私はこんなわがまま少年を好きだったりするのか、自分としても謎なのだ



     「あ、」

     「どうした?」


     ポキっと、小さな音がしてシャーペンの芯が折れた

     ノックしてみるけど、次の芯が出てこない


     「シャー芯切れちゃった。ごめん、一本くれない?」

     「いいけど、10倍にして返せよ」

     「10本返せってか」

     「そう」


     藤真は筆箱を開けて、替え芯を取り出す

     「ありがと」と言ってそれを受け取ると、藤真は部活に行く用意を始めた


     隣の席になって仲良くなってから、朝も帰りも挨拶はいつもしてる

     「じゃあね」って、それだけ

     友達に言ってるみたいに「また明日」とは言えないでいた

     「また明日」って言うのは、明日も会って話そうね、と言っているよな気がして、仲良くないといえない気がした

     周りから見れば何それと言われてしまいそうだけど、私には結構重大なことだったりする

     「また明日」と言えたらいいなぁと、思うけど



     「じゃあ、俺もう行くから」

     「あ、うん。じゃあね」


     やっぱり言えない自分にちょっと嫌気が差す

     日誌を閉じて、黒板綺麗にしないと、と思い立ち上がった


     「また明日な」

     「え、」


     藤真が教室を出る前に言ったその一言に私はびっくりしてしまって

     思わず藤真を追いかけようと教室を出た


     「ってもういないし…」


     どんだけ早足なんだあいつ、と思いながら壁にもたれかかった


     ”また明日”

     別に意味なんてなかっただろうけど、ただ言っただけだってわかってるけど

     しばらく緩む頬を抑えられそうにない


























     07.01.18

     よく考えるとまた明日って言うの仲良い子だけだなぁと思いまして

     3、2、1と繋がってたり繋がってなかったり