「あれ、寿じゃん」

「あ、」


学校からの帰り道、駅で寿に会った。寿とは家が隣同士。つまり、ここで会うということは家まで一緒に帰るということだ。


「隣、座れば?」

「おう」


電車が来るまでまだ時間がある。ホームにあるベンチに座っていた私は寿に隣を勧めた。



「…なぁ」

「何?」

「4組の山谷に告白されたんだろ?」

「ちょ、何で知ってんの!?」


ベンチの背に完全にもたれかかっていたのに寿の一言で前のめりになった。一体どこから漏れたんだろうか。告白されたのは人のいない屋上で、まだ友達にも言ってないのに。


「たまたま聞いただけだよ」

「あ、そう…」

「何で断ったんだ?」

「断ったことまで知ってるの?」

「まぁな。で、何で?」

「…好きじゃなかったから」


もう一度ベンチに身体を預けながら、小さな声でそう言った。


「好きじゃないと付き合えないのかよ」

「悪い?」

「悪かねーけど。じゃあ好きなやつはいねーの?」

「残念ながら最近は恋する甘酸っぱさを味わってないね」

「寂しいやつ」

「うるさい」


はぁ、とため息を一つ吐きながら空を見上げた


「恋、したいなー」

「俺にすれば?」

「何バカ言ってんの」


あんた同じクラスの隣の席の子が好きなんでしょ。私があんたを好きになっても意味無いのに。そのくらい知ってるんだから。幼馴染なめんなよ。
少し涙が滲んだけど、ばれないように拭った。私の恋は甘酸っぱいどころか苦くてたまらない。


新しい恋を、したかった。
















恋をしよう
07.08.04