彼が死んで私の世界は暗くなった。彼はいつ死んでもおかしくないようなことをしていたことは知っている。それでも彼が死んだとき、私の心はぽっかり穴が開いたような、そんな気持ちになった。 彼は変わった人で、私はいつも人に聞かれた。”どうして彼と一緒にいるの?”と。その答えは簡単だった。彼と一緒にいたかった。ただそれだけだ。彼のいない世界なんて考えられなかった。彼と手を繋ぎ、指を絡めて、キスをして。二人で抱き合い寄り添いあった。彼が私に幸福を与えた。彼の傍にいることが私の幸せだった。 私は彼を愛していた。彼は私を愛していた。彼が私の世界だった。彼が私の生きる意味だった。彼がいなくなったということは、私の生きる意味がなくなったということだ。人は死んだら無になるという。彼は死んでしまった。本当にいなくなった。 彼の言葉がこだまする。優しく囁いてくれた彼の言葉を、愛してると言ってくれた彼の言葉を。彼が私を触る感触を思い出す。優しく触れた彼の手を、強く重ねた唇を。こんなにもはっきりと思い出せるのに、もう彼が言葉を発することはない。彼が私に触れることはない。私はまだ彼を愛しているのに、彼はいなくなった。 無になってしまったのなら、私も一緒に無になろう。いや、彼が死んだとき、私は無になった。今はただ酸素を吸って二酸化炭素を吐くだけの存在。だったらそれを断ち切ってしまおう。 ただ、土に還る前に一つだけ。 トワイライト 06.10.30 |