「俺今日誕生日なんだ」 英語の授業中、隣の席の切原が突然そんなことを言った。普段なら机は離れてるけど切原が教科書を忘れたとかで私の机と切原の机はくっつけてある(何で置き勉してんのに教科書忘れてんだろう) 「それで?」 「うわっ冷てー。お祝いしてくんないの?」 「だって私何にも持ってないし。ていうか今授業中だし」 「じゃあ問4俺当たるんだけど、そこの答え教えてくんない?」 「…こんなのもわかんないの?」 はあ、と溜め息をつきながら教科書に答えを書き込んだ。切原は小さな声でサンキュ、と言ってノートに写す。そうかこいつ今日が誕生日なのか。切原とは席は隣だけど、隣になってまだそんなに日は経ってないし、特に仲がいいわけじゃない。でもやっぱり誕生日となるとそれなりにお祝いしなきゃなあという気持ちになる。けどさっき切原に言ったように今日私は何にも持ってないし、だからって答えを教えただけじゃなんか可哀相な気もする。 そうだ、と思い鞄の中から折り紙を出した。文化祭の準備のために持って来てたやつだ。いろいろ折れるわけじゃないけど、普通に鶴くらいなら折れる。ちゃっちゃと鶴を折って、筆箱の中からカラーペンを取り出した。そんなとき切原はというと先生に当てられて四苦八苦してる。あーあ、答え教えてやったのに読み方がわからないらしくとちりまくり。まあこれなら気にせずできる。赤とか黄色とか、とりあえずカラフルに、そして配色に気をつけながらペンを進めた。 「はあ…」 切原はやっと終わった、と言った感じでやっと席についた。何でたった3単語を言うだけでこんなに時間掛かるんだろうこいつ。そんなことは置いといて、「ん」と言って切原に鶴と手紙を渡した。 「何これ」 「誕生日プレゼント」 手紙には、HAPPY BIRTHDAY という文字とイラストを添えておいた。我ながらそっくりな切原の似顔絵。 「ぷっ」 「…人の力作を笑うんじゃないわよ」 「いや、そうじゃなくて、って意外と可愛いことすんだなあって思って」 「私はいつだって可愛いわよ」 「あはは、悪い悪い」 ありがとな、と切原は笑って受けとった。バカだけど、笑った顔はちょっと可愛いなと思った。 0925 君の生まれた日 07.09.25 |