「数学なんて滅びればいいと思うの」
「バカなこと言ってないで、はい、まずは最初の問題」
「うう…」
バカなことじゃない。私は至って本気だ!
そんな私の言葉を辰也は軽く受け流して、シャーペンでプリントをこつこつ叩く。
「サインコサインタンジェントって何?なんの暗号?」
「暗号じゃないよ。さっき教えただろ」
「もうやだ!頭痛い!」
この間の中間テスト、見事に数学で赤点を取った私は、赤点取得者に出された課題プリントを攻略するべく恋人に頼ったのである。
「、ほかの科目は成績いいのにね」
「多分私の脳が数学を拒否してるんだと思う」
「拒否してても無理矢理やらないと。もう一回教えるから」
ううー、と唸りつつ辰也の説明を聞く。
本当に、なんで数学はまったくといっていいほど頭に入ってこないんだろう…。
「え…なんでここに当てはめるとこうなるの?」
「『なんで』じゃなくて『こうなる』って覚えちゃうんだよ。理解しようとすると大変だから、暗記しないと。数学だって暗記科目だよ」
「はー…」
辰也の説明を聞きつつ、目の前のプリントと格闘する。
えっと…この問題は…。
「えっと…ここがこうなるから…次は…」
辰也は黙って私が1問目を解くのを待つ。
ここは…確かさっき説明してくれたところだから…。
「できた!」
「じゃあ、見せて」
「合ってる?」
辰也は私のプリントを見る。
ど、どうだろう。頑張ったんだけど。
「合ってるよ」
「やったー!」
「うん、よくやったね」
辰也はそう言うと、私の頭に手を回して、キスをする。
「え」
「頑張ったから、ご褒美」
「え、いい、です。遠慮します」
「どうして?」
「だって、1問解くごとにキスされたら集中できないし」
せっかく1問目を解いたのに、ドキドキして集中できなくなってしまう。
実際、今もさっきの問題の解き方が飛びそうだ。
「へのご褒美じゃないよ」
「え?」
「に勉強を教えて、無事問題解けたから、頑張って教えたオレへのご褒美」
少し、嫌な予感がする。
それって、もしかして。
「それじゃ、私に拒否権は」
「ないよ?」
「で、でも、それじゃ集中できないから、結局問題解けないと思う!」
必死に反論してみると、辰也は少し考える仕草をする。
「それは困るな」
「でしょ」
ほっと胸を撫で下ろす。
こ、これで大丈夫だよね…。
「じゃあ、全部できたら、最後にまとめてもらおうか」
「え…まとめて?」
「利子もつけてね」
「ちょ、ちょっと待って。利子って」
「早くやろう。頑張って教えるから、早く終わらせよう?」
辰也は目に見えて張り切りだす。
プリントは全部で10問。それで利子って、…利子って…。
「わからないところあったら、どんどん聞いて」
「…うん、まあ、ありがたいんですけど…」
「頑張ろうね。楽しみにしてるよ、ご褒美」
笑いながら言う辰也。
プリントが終わった後の私は無事なんだろうか…。
10α
11.11.14
リクエストの勉強教えてもらうために氷室の部屋に行く話でした〜
しふぉんさんリクエストありがとうございました!
これ書くために微分積分法とか三角関数とかチラっとググったんですが訳が分かりませんでした
こんなもん解いてたのかと思うと…高校時代の私を本気で尊敬します
作中の「数学も暗記科目」は高校時代私が友人に教えるとき言ってた言葉です
数学は結構得意なはずだったんだ…それでも今は訳がわからない 月日は残酷です
感想もらえるとやる気出ます!
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