今日はクリスマスイブだ。
去年のクリスマスは辰也と二人で少し高めのレストランに行った。
今年は去年と変えて、辰也の部屋で夕飯とケーキを作る予定だ。

定時に仕事を終えて会社を出る。
自然と早足になってしまう。

「あ」

電車に乗ると、辰也からラインが来た。
『オレも今仕事終わったよ。頼まれてたもの買って帰るね』

「ありがとう」と返信をする。
夕飯の材料は辰也に買い出しを頼んでおいた。
私は一度家に帰って、着替えてプレゼントを取ってこなくては。






辰也の家の前に着く。さきほど「そのまま入ってきて」と連絡が来ていたので、合鍵を使ってドアを開けた。

、いらっしゃい」
「お邪魔します」

ドアを開けてすぐの台所に辰也は立っている。
コートを脱ぐ前に辰也にキスをした。

「もう準備してくれてるんだ。ありがと」

辰也は食材を出してすでに下ごしらえを進めてくれているようだ。
私も手を洗ってエプロンをつけた。

「どこまで進んでる?」」
「今ここ」

二人で携帯のレシピを見る。
今日はクリスマスらしくローストチキンレッグを作る。
二人とも初めて作るから、レシピを見ながら進めていく。

「こういうクリスマスもいいね」
「うん」

去年レストランで過ごした時間も素敵だったけど、二人で一緒に料理をするのも楽しい。
辰也と過ごすなら、どんなときだって素敵な時間だけれど。





料理は無事終了。見た目はとてもきれいにできている。
一番の問題は味だけど。

料理をテーブルの上に運んで、二人で隣に座る。

「メリークリスマス」

少し高めのワインを開けて乾杯をする。
ドキドキしながら料理を口に運んだ。

「おいしい!」
「うん!」

辰也も私も笑顔が零れる。
初めての料理で緊張したけど、うまく出来ている。

「よかったね」

嬉しくなってもう一口食べる。辰也と一緒に食べるとよりおいしく感じる気がする。
食事中にはしたないと思いつつ、辰也にもたれかかった
辰也は優しく私の髪を撫でてくれる。

「ねえ、辰也。私たち付き合って大分経つでしょ?」

私と辰也が付き合い始めたのは高校生の頃だ。
今はお互い社会人だから、辰也との付き合いはずいぶん長くなった。

「ずっと一緒にいるけど、まだまだ初めてのことたくさんあるね」

今日は初めての料理を二人で作った。
ほんの些細なことだけど、二人で胸を高鳴らせた。

「何年一緒にいても、きっと「初めて」は尽きないね」

ちょっとしたことでいい。今日みたいに初めての料理だったり、初めての場所に旅行に行くとか、そんな些細な「初めて」が、辰也と一緒だとこんなにも彩られる。
今日は特別なクリスマスという日だけど、辰也といれば明日や明後日、その次の日だって特別な日だ。

「これから何十年一緒にいても、飽きることなんて絶対ないんだろうなって」

そう言うと、辰也は一瞬驚いた顔をした後すぐ笑顔になる。

「それはプロポーズ?」
「えっ…」
「これから何十年先まで一緒にいようっていう」
「あ…!」

自分の言葉をよくよく反芻してやっと気付く。
確かにこれじゃプロポーズ同然た。


「あの…」

赤くなった頬を抑えつつ辰也のほうに向き直す。

「…そう取ってくれていいよ」

ぎゅっと辰也の手を握る。
今さっき言った言葉はそういう意味じゃなかったけど、もともと辰也以外と結婚する気はない。
だから、今言った言葉をプロポーズにしてくれて構わない。



辰也は私をそっと抱き寄せる。
辰也の腕の中は、いつだって温かい。

「すごく嬉しいけど、そういうことはちゃんとオレから言いたい」

辰也は少しだけ申し訳なさそうな顔で言う。
私もぎゅっと辰也を抱きしめた。

「待ってるね」
「うん。あまり待たせないから」

そう言ってキスをする。
ジングルベルと一緒に、幸せの足音が聞こえてくる。















ジングルベル
14.12.24


メリークリスマス!




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