、はい。いつもありがとう」

辰也は突然そう言って小さな花束を渡してきた。

「あ、ありがとう…」

今日は私の誕生日でもないし、ホワイトデーにはまだ早い。
嬉しいけど、花束をもらうようなことはしていない。
何だろう…と花束を見つめて考え込んでいると、辰也は微笑んだ。

「今日はありがとうの日だから」

だからだよ、と辰也は言う。
そっか、3月9日だからか…。
いや、でも、そもそも感謝されるようなことしたっけ…。
またまた考え込むと、辰也は私の頭を撫でる。

「いつも感謝してるよ。いつもオレの傍にいてくれて、いつもオレを支えてくれて、こんな花束じゃ伝えきれないぐらい、ありがとうって思ってる」

辰也は優しく笑いながらそう言う。
そんなこと言ったら、私だって。

「私も、いつもありがとう」

辰也はいつだって優しい。
私が落ち込んだときは優しく慰めてくれる。私が嬉しいときは一緒に喜んでくれる。
私の方こそ、『いつもありがとう』と言いたいくらい。

「オレは何もしてないよ」
「そんなことないよ!私は嬉しいから」

辰也は花束をくれたのに、私は何も持っていない。
何か…と思ったけど、手持ちなんて何もないし…。

「…辰也、ちょっとこっち来て」

何にも持ってないけど、これなら喜んでくれるかな。
そう思い辰也を手招きする。

「…いつも、ありがとう」

そう言って、辰也の唇にキスをした。
いつもキスは辰也からばかりで、私からなんてほとんどないから。
喜んでくれるだろうか。


「わっ」
「ありがとう。すごく嬉しい」

辰也は私をぎゅっと抱きしめる。
…よかった。
私の気持ちは、伝わったみたいだ。

、本当にいつもありがとう」

辰也は私の頬を撫でながら、優しい声でそう話す。

がこうやって傍にいてくれるから、オレはいつでも真っ直ぐ立っていられるんだよ」

本当に私は、辰也に特別なことをしているつもりはないんだけど、辰也の言うように、私の存在が辰也の支えになれているなら、とても嬉しい。

「ありがとう」

そう呟いた辰也は、とても小さく見えた。
そんな彼が、とても愛おしい。












『ありがとう』
14.03.09







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