朝起きると、辰也はもうすでにベッドにはいなかった。
辰也が早起きするなんて珍しい。朝は苦手なはずなのに。
眠い目をこすりながら、リビングへ行った。
「おはよう、」
辰也は台所に立って何やら作業をしている。
覗き込むと、お弁当を作っているようだ。
「あれ、お弁当当番私じゃ…」
私と辰也は家事を分担制にしている。
今週のお弁当作りは私の当番のはずだ。
「今日はほら、3月9日だから感謝の日だろ?」
そう言われてカレンダーを見る。
確かに今日は3月9日。サンキューの日、即ちありがとうの日だ。
「いつもに感謝してるから、今日はオレがやるよ。ゴミも出したし、洗濯も回してるから。ああ、あと夕飯も作るし」
「えっ!」
驚いていると、オーブンがチンと鳴る。トーストが焼け上がったようだ。
朝ごはんにお弁当、ゴミ出し、洗濯…家事のほとんどをやってくれているようだ。
「はゆっくりしてて」
そんなこと言われても、そうもいかない。
台所の辰也の隣に立った。
「私もやるよ」
「いいってば」
「でも、私だって辰也に感謝してるよ」
辰也は私に感謝してるからというけど、それを言うなら私も同じだ。
辰也には感謝してもしきれない。
家事もきっちりやってくれるし、仕事もばっちりこなしてくれる。
まさに理想の旦那さんだ。
「オレのほうがしてるよ」
「そんなことない!」
「いや、オレのほうがしてる。オレはお義父さんとお義母さんにも感謝してるんだ。を産んでくれてありがとうって」
辰也は至って真面目な顔でそう言ってくる。
辰也の目は本気だ。
多分、私が何を言っても聞いてはくれない。
「…嬉しいけど、されるばっかりじゃ申し訳ないし…」
「そう?…じゃあ、今日帰ったらいっぱい抱きしめて」
辰也は微笑みながらそう言ってくる。
そんなことでいいんだろうか。
…いや、いいんだろう。辰也の表情がそれが本当にしてほしいことだと言っている。
「うん」
「やった」
「ふふ」
そう答えると辰也は嬉しそうな顔をした。
今日はご飯を作ってくれるということだけど、明日の夕飯は辰也の大好物にしよう。
「じゃ、顔洗ってくるね」
「あ、。ちょっと待って」
洗面所に向かおうとすると、辰也に引き留められた。
「まだしてない」
そう言って辰也は私のキスをする。
おはようのキスだ。
「ふふ」
キスをすると実感する。
私は今日も幸せだって。
ありがとうの日
15.03.09
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