「……うーん」

生まれて初めてチョコレートを手作りしてみた。
結果は、失敗。食べられなくはないけど、不味い。

残念だけど、仕方ない。
こんなものを恋人にあげるわけにはいかないから、お店に買いに行くことにした。


「…で、これかよ」
「うん」

お店はバレンタイン一色だった。
さすが恋人たちの祭典バレンタイン。私の行ったお店に並んでいたのはあまーいチョコレートばかり。

「花宮、甘いの嫌いでしょ?」
「で、失敗したもの持ってきたのかよ」

だって、花宮は絶対に買ってきた甘いチョコレートなんて食べてくれない。
だったら、不味いけど食べれなくはない苦めチョコレートのほうが食べてくれそうだし…。

「…やっぱり、いらない?」

…まあ、悲しいけどしょうがない。
初めてチョコレートを作るっていうのに練習もせず前日の夜に作り始めて、案の定失敗。
こんなの、自分でもフォローしようがない。

「……」
「おい」

出したチョコレートを引っ込めようとすると、その腕を掴まれる。

「どうすんだよ、それ」
「まあ、食べられなくはないから、自分で食べようかと」
「ふざけんじゃねえよ」
「いたっ」

花宮はもう一方の手で私の頭を叩いた。

「もうオレのもんだろ」

その言葉に、心臓が跳ねる。
本当に、この人は。

「…どう?」

チョコを一口放り込んだ花宮に、恐る恐る聞いてみる。

「まずい」
「…だよねー」

そう言いながらも、花宮は残さず全部食べ終える。
こういうときばっかり、優しいんだから。

「…誰が優しいって?」
「あれ、声に出してた?」

まずいまずい、と口を押さえる。
そんな私の手を掴んで、花宮は薄く笑う。

「オレが自分のもんを他人の勝手にさせるわけねーだろ」

そう言って私にキスをする。
優しさじゃなくても、いいよ。
「自分のもの」に、チョコだけじゃなく私も入っているなら。










あげる
13.02.19

バレンタイン過ぎてるけどどうしても書きたくなったので





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