「白石の初恋っていつだった?」

私がなるべく明るい声でそう問うと、白石は顔をしかめてしまった。
やっぱり言いたくないものなのかなあ。でも彼女としては、どうしても気になってしまう部分なわけで。
聞きたいような聞きたくないような、ずっとそんな想いを抱えていたけれど、どうせなら聞いてしまったほうがいいかな、なんて思って聞いてみたのに、やっぱり聞かなければよかったかな。

「話したくないなら別にいいよ」
「いや、そういうわけやなくて。はそんなん聞いておもろい?」
「面白いっていうか、ただ単に興味っていうか、気になるっていうか」

世間でもよく言われる「好きな人のことは何でも知りたい」というやつだ。
私は他人にあまり興味がないほうだけど、好きな人のこととなれば話は別。

「別にええけど…。多分幼稚園の頃?」
「まあ、おませさん」
「先生が可愛い人でなあ。告白したら「私も白石くんのこと大好きよ?」で終わり」
「おお…ありがちな…」

男の子のほとんどは「幼稚園の先生に告白して流される」というパターンを経験してると思うのは私の気のせいだろうか。
それにしても白石の小さい頃かあ。私は白石の中学入った後(というより2年生になったとき)からしか知らないから全然想像がつかない。

「で、は?」
「え?」
「え?やなくて、初恋の話。いつ?まさか俺にだけ話させてはい終了なんてことないやろ?」
「あ、うん、そうだね」

白石は私をじっと見る。話題を変えたりはできなそうな雰囲気だ。
聞かれるだろうな、とは思ってたけど実際言うのは、恥ずかしいというかなんというか。

「初恋はその、」
「うん」
「ていうか、想像ついてるでしょ」
「まあまあ、な」
「白石に、決まってるじゃない」

そう言うと白石は私の頭に手を添えてキスをする。
「もしかしてこうなること狙ってたん?」白石が耳元で囁いたけど、聞こえないふりをした。


なんでこんなこと聞いたのか、と聞かれれば答えは一つ。白石の言った通りだよ。
いつも白石の思い通りにさせられてるんだから、たまには逆の立場になってもいいじゃない?













愛を語るよりキスをして

(なんて言えないから、そうやって聞いたんだよ)
09.04.14



ハッピーバースデー!