「げ」

部のミーティングを終え、帰ろうと靴を履き変えていると、外からぽつぽつと音がしてきた。
もしやと思いおそるおそる視線を外に移すと、案の定雨が降っている。
あいにく今日は折り畳みの傘を持ってきていない。昨日も夕立があったため折りたたみ傘を使い、今日は玄関に干してきてしまったのだ。

早足で帰れば大丈夫だろうか。
そう思い上履きを急いでげた箱にしまう。
駆け足で外へでる。ひとまず駅まで行ければそれでいい。そう思って。





「……」

急いで外に出たのは失敗だった。二分前の自分の行動を後悔する。
小雨だからと侮っていたら雨はどんどん強まるばかり。
走っているうちに、このままじゃびしょ濡れになると思い近くのバス停の屋根の下に避難した。
駅まであと歩いて十分ほど。
その途中にコンビニもあったはず。そこに傘も売っているだろう。
進むべきか、待つべきか。

少し考えて、あと五分待って雨が止まなければ駅に向かおうと決めた。
五分ほどこのベンチで本でも読んでいよう。
そう思いベンチに腰掛けたとき、水たまりを走る足音が聞こえてきた。

「うー…災難…」

そう言いながらバス停に入ってきたのはクラスメイトのだ。

「あれ、黛君。バス通学なの?」

はオレの存在に気づくと、首を傾げながらそう聞いてきた。

「いや、雨宿り。そっちは」
「傘途中で壊れちゃって…」

は苦笑いしながら水色の折りたたみ傘を見せてくる。
確かに骨組みが折れている。今日はそれなりに風も強い。そのため壊れてしまったのだろう。

「うーん…雨止みそうにないよねえ」

はそう言いながらオレの隣に座ってくる。
の制服のシャツは濡れて肌に張り付いている。
一瞬目を奪われた後に、我に返って顔を背けた。

「黛くんて駅まで行くの?」
「…そうだけど」
「じゃあ一緒だ。うーん…走っていった方がいいかなあ」

は外を除き見ながら言う。

「途中にコンビにあるし、傘買えるよね?」
「多分な」
「じゃあ行っちゃう?たぶんしばらく止まないよ」

の言うことはおそらく正しい。
この雨はおそらく30分は止まない。そういう降り方をしている。
待ってても止まないのなら途中のコンビニまで濡れるのを覚悟で行った方がいいかもしれない。そもそも今の時点でもオレもびしょ濡れだ。

「お前は行かない方がいいと思うけど」
「え?なんで?」

しかしはここから動かない方がいいだろう。
そう思って発言すると、はきょとんとした目でオレを見てきた。
別のフェミニズムを気取ってそう言った訳じゃない。オレはそういうタイプじゃない。

「…別に」
「なんで?」

はオレから理由を聞き出そうと食い下がってくる。
オレは顔を背けながら答えた。

「すげえ言いにくいけど」
「黛くんがそんなこと言うの珍しいね」

の言うとおり、オレが言い淀むことはあまりない。
しかし、今回ばかりはさすがのオレだって少し言いにくい。

「…お前、下着透けてる」
「!」

オレの言葉で、は自分の胸元を確認する。
すぐに自分のシャツの状態に気付き慌てて両手で胸のあたりを押さえた。

「え、えへへ…」
「……」

は顔を赤くして照れ笑いをする。
オレに指摘されるまで気付かないとはどれだけ無防備なんだこいつは。
こちらとしては、責任取ってほしいぐらいだ。
こんな光景見せて、オレの目に焼き付けてさせて、欲を湧き上がらせた責任を。

「…タオルとか持ってねえの」
「た、タオルも濡れてますね…」
「……」
「…ど、どうしよ」

どうしようはこっちも同じだ、と言いたいところだがぐっと飲み込んだ。
オレはすっと立ち上がる。

「黛くん?」
「…傘とタオル買ってくる」
「えっ」
「ここで待ってろ」
「私も…いや、やっぱお願いします」

は言いかけて頭を下げてくる。
オレだってのこんな姿ほかの男に見せるのはまっぴらごめんだ。

「あの、黛くん」
「なんだよ」
「ありがと」

は少し赤い顔でそう言ってくる。
それを見て自分の頬も赤くなった気がして、慌ててバス停から駆けだした。
当たる雨は熱くなった体にはちょうどよかった。

とりあえず、タオル2枚と傘を1つ買えばいいだろう。











思春期未満お断り
15.07.28



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