「…雨、止みそうにないね」
「うん…」
土曜日、今日は授業も部活もない。
こんなチャンス滅多にない。
だから、辰也と遊園地にでも行こうかと言ってたんだけど…。
「これは無理かな」
朝起きたら土砂降り。
一応辰也の家まで来て、少し待ってみようと思ったけど、これは止みそうにない。
昨日一緒に作ったてるてる坊主もびしょ濡れだ。
「…じゃあ、また今度だね」
「うん」
また今度、か。
いつになるんだろう。
「…もうお昼だし、何か食べる?簡単なやつなら作るよ」
「本当?じゃあオムライスがいいな」
そう提案すると、辰也は嬉しそうに笑って答えた。
普段は大人っぽいのに、こういうところ子供みたい。
*
「いい匂い」
「もうちょっと待ってね」
ケチャップライスを作って次は卵。
外からの雨音は強まる一方だ。
「……」
まあ、いいんだけど。
遊園地なんて行かなくたって、辰也といれば、それで…。
「、何か手伝おうか?」
「大丈夫だよ」
辰也がキッチンまで来てそう言う。
私は笑って大丈夫と言った。
もうすぐ出来上がる。我ながらいい出来だ。
「、」
「?」
辰也は私のエプロンの裾を引っ張る。
また、子供みたいな仕草だ。
「ケチャップ、ハートマークにしてほしいな」
辰也は子供っぽい笑顔でそう言う。
…辰也、こういうの好きだなあ。
「うん」
ケチャップでハートマークを描く。
せっかくだから、自分のも。
「……」
大盛りのお皿と、普通のお皿。
二つ並んだハートマーク。
そして、こうやって二人でキッチンに並んで。
…なんか、こういうの…。
「新婚さんみたいだね」
「えっ!?」
思わぬ言葉に、大声を上げてしまう。
…ううん、思わぬじゃない。
私も思っていたことだ。
「し、新婚さん!?」
「思わなかった?」
「…思った、けど」
そう言うと、辰也はキスをする。
新婚さん、新婚さん…。
胸の奥が熱くなる。
辰也の服の袖をぎゅっと握った。
「あ、あの」
「ん?」
「…あなた」
新婚さんと言えば、これかな、と。
ちょっと恥ずかしいけど、言ってみたくなった。
せっかく、新婚さんなんて話なんだし…。
「」
「わっ!?」
辰也は痛いくらい、ぎゅっと抱きしめてくる。
苦しいけど、嫌じゃない。
「…」
「?」
「本当はさ、今日すごく残念だった」
「……」
辰也は寂しそうに笑う。
「と遊園地楽しみだなって、そう思ってたんだけど」
「…私も」
「でも、今は行かなくてよかったかなって思ってる」
もう一度キスをする。
今日既に、何度目だろう。
「遊園地行ってたら、『あなた』なんて言ってもらえなかったね」
辰也は嬉しそうに、噛み締めるようにそう言った。
…私も。
強がってみたけど、私もすごく寂しくて。
だって、辰也と遊園地に行くのなんて初めて。
ジェットコースター乗ったり、お化け屋敷入ったり、観覧車に乗ったり。
そんなことを思い描いていたのに、全部なくなってしまったんだから。
だけど、もういいや。
辰也と一緒にいられれば、それでいい。
心からそう思う。
「…」
「…ん」
「…オムライス、後でいい?」
辰也は熱っぽい瞳で、何度もキスをしながらそう言う。
横目ですでに出来上がった二皿のオムライスを見た。
今度は私からキスをする。
「…うん」
ご飯は、後でいい。
少しお腹空いたけど、今はこのままがいい。
辰也と、くっついていたい。
雨に唄えば
13.09.10
栄子さんリクエストのデートが雨になって家でイチャイチャする室ちんでした〜
新婚ごっこネタは一度書きたかったので満足!栄子さんありがとうございました!
感想もらえるとやる気出ます!
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