放課後、屋上までの階段を慎重に上って行く。
そっと屋上へのドアを開けて、周りを見渡す。
屋上の隅っこにいつも財前はいて、私のほうを見ていないのに、いつも私の名前を呼ぶ。

「また来たんか、
「また来ましたよ」

私は笑って言うけど、心の中は悔しい気持ちでいっぱいだ。
たまには驚かせてやりたいのに、どうしていつも私だってわかるんだろう。
放課後、屋上に来るのは人数こそ多くないけど私だけというわけではないのに。

、よう毎日来るなあ」
「財前こそ」

そうは言ったけど、別に毎日来ているわけじゃない。
ただ財前と来る日がかぶっている、それだけのこと。
テニス部のある日はもちろん財前は屋上には来ないし、私も行かない。
財前にしてみれば私は毎日屋上に通っているように見えるんだろうか。

「財前、そんなに屋上好きなの?」
「…好きっちゅーか、ぼーっとするのにちょうどええってだけ」
「へえ、最近いい天気だもんね」

いつもこんな他愛無い話をするだけだけど、それだけのためにいつもここに来てしまう。
そもそも私が屋上に来るようになったのも財前が原因なわけで。

担任の先生から、「財前が委員会サボってるから探してくれ」と頼まれて、特に予定もないしいいかと思って適当に校内を探して屋上に行った。
そこで夕焼けの中にいる財前に一目惚れしてしまった、という単純な話。

教室ではほとんど話したことがないけれど、今でも屋上以外で話したりすることはないけれど、屋上のドアを開ければ外を見たまま財前が私の名前を呼んでくれる。とりとめのない話ができる。
ただそれだけのために屋上に来ている、本当に単純。

「…
「なに?」

いつもきっぱり物事を言う財前にしては珍しく言いよどんでいる。
何か言いにくいことでも言おうとしているんだろうか。

「ホンマに毎日屋上来てるん?」
「毎日ってわけじゃないけど、まあ結構頻繁に」

別に嘘ってわけじゃない。
毎日ってわけじゃないし、それなりに頻繁に来てはいる。テニス部ある日は来ないけれど。

「せやったら、テニス部休みんときは必ず来ぃや」
「え」
おらんと屋上来てもつまらんやろ」

まさかそんなことを言われるとは思わず、固まりながら私は必死に口を動かした。

「それは、どういう意味?」
「そのまんまの意味」

つまりそれは、私の都合のいいように解釈してしまっていいんだろうか。
不意打ちで驚かされて悔しいから、今度こそ屋上来るときはそっと足音しのばせて、驚かせてみようかな。




















09.11.21
SUMMER AGAIN様へ!