WCが終わって数日。
私と辰也は近所の町で買い物をしていた。

「あ、これ可愛い」

ふと目に付いたのは雑貨屋にあるストラップ。
可愛いなと思って足を止める。

「本当だ」

よくあるスポーツをモチーフにしたストラップ。
サッカーボールがついているもの、テニスラケットがついているもの、たくさん揃っている中でやはり目を引くのはバスケットボールを持ったものだ。
しかも一緒にうさぎもついている。
細かいつくりになっていて、とても可愛い。

「バスケしてるのもあるんだ」
「ね。これ買おうかな」

ちょうど携帯につけていたストラップが切れてしまった。
うさぎが可愛いし、何より辰也の好きなバスケットボールだ。

「オレも買おうかな」
「辰也も?」
「うん。可愛すぎるかな?」
「ううん!」

辰也も買うならお揃いだ。
自然と心が弾む。

「じゃあこれはオレにプレゼントさせて?」

辰也は二つのストラップを手に取ってそう言った。

「え?」
「この間のお礼にね」
「この間?」

なんのことかわからない。
疑問符ばかり浮かべる私に、辰也は微笑む。

「WCでさ、ずっと一緒にいてくれただろ」
「え…」
「嬉しかったよ。タイガとちゃんと話せたのも、がいたからだ」

確かにWCの最中、マネージャーである私はずっと辰也の傍にいた。
誠凛戦の最中も、その後も。
だけど、

「私は何もしてないよ」

一緒にいたけど、私は何もしていない。
それどころか、何もできなかったのだ。
悩んで、悔しがっていた辰也に、何かしたかったけど、何もできなかった。

が傍にいてくれただけで嬉しかったんだよ」

辰也はそう言って笑うけど、でも、やっぱり、それは少し違うと思う。

「やっぱり、私じゃないよ。全部辰也が頑張ったからだよ」

辰也が大我くんとちゃんと話ができたのも、自分の悩みを乗り越えられたのも、全部辰也が頑張ったから。
私が何かしたわけじゃない。
辰也は辰也の力で前に進んだんだよ。

は優しいね」
「もう」

辰也の頬を人差し指でぎゅっと押した。
辰也はいつもこうだ。

「辰也の悪いところ」
「?」
「自分に自信がないところ」

そう言うと、辰也は眉を下げてしまう。

「そんなところも好きだけど…でも、ちょっと悲しいよ」

「辰也のしてきたことは、誰のおかげでもなくて、全部辰也がしてきたことなんだよ」

辰也はなんだかいつも自分に自信がなくて、結構卑屈なところがあって。
だけど、もっと自分に自信を持ってほしい。
だって辰也が乗り越えてきたことは、紛れもなく辰也自身がしてきたことなんだから。

「…

辰也は私の手を握る。
冷たい手だ。

はかっこいいね」
「そ、そう?」
「うん。惚れ直しちゃった」

辰也は悪戯っぽく笑う。
そしてさっきのストラップの一つを私に渡した。

「じゃあ、これはお互いに買おう」
「うん」
「…

辰也は優しい手つきで私の頬を撫でる。

「…これからも、傍にいてほしい。がいてくれたら、オレは」

辰也はみなまで言わない。
だけど、何を言いたいか、わかるよ。

「うん」

会計を済ませて、買ったものを交換する。
同じものだけど、嬉しい。

、オレはさ、これからもいろいろ間違えるかもしれないけど」
「辰也」
がいてくれれば、きっと大丈夫だから」

辰也は笑う。
辰也の手を、もう一度ぎゅっと握った。

「一緒に歩いて行こうね」










あたらしい明日はあなたがつくるのよ
14.06.22

かわいくなりたい!企画様へ

室ちんが歩いてきた道は間違いなく彼が歩んできた歴史であり彼が作って道なんだよ、というお話




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