昨日の放課後、入学した時から好きだった人、白石に告白された。
それまで仲がいい友達って感じで、それでも楽しかったけど、やっぱり告白されてすごくすごく嬉しかった。
付き合ってほしいと言われ放心してしまったけどはっと我に返ってすぐにOKした。

昨夜白石からメールが来た。
「これからよろしく」って、それだけだったけど、私はとてもうれしかった。
なんて買えそうか30分くらい迷って「こちらこそよろしく」ってメールを返した。
メールを打つのにあんなに緊張したのは初めてだった。

昨日の夜はあまり眠れなかった。
嬉しくて、ドキドキして、信じられなくて。
目が覚めたとき、とても幸せな夢を見たような気がしたけど、どんな夢かは忘れてしまった。

今日、一緒に帰ろうと約束していたから昇降口で白石を待った。
実際の待ち時間は5分くらいだったけど、あっという間にも永遠にも感じられた。
白石が来て、「待った?」と聞かれたから「今来たとこだよ」と答えた。
ああ、なんだか恋人同士みたいな会話だ。恋人同士なんだけれど。

んとこのクラスはもう数学のテストやったん?」
「ううん、明日だよ」
「へえ、ちゃんと勉強しとる?」
「う…数学は苦手なんだよね…」
「へえ、そうだったん?」
「う、うん…」
「なんなら教えたろか?」
「え、でも、そんな」

ありがとう、そう言おうとしたはずなのになぜかその言葉がうまく出てこない。
なんでだろう、前にも勉強教えてもらったことはあるのに、
そのときはちゃんとありがとうと言えたはずなのに。

「教えられんの、嫌なん?」
「そんなこと、ないよ」

あれ、白石の顔がうまく見れない。
おかしいな、昨日までは普通に話せたのに。
軽口叩いたりして、笑いながら話せてたはずなのに。

?」
「えっ!?な、なに!?」
「いや、ずっと俯いとるから具合悪いんかなー思て」
「全然!全然悪くないよ!」
「?」

白石は不思議そうな顔をしている。
当たり前だ。普段の私と全然違うから。
言葉なんか選ばなくても会話ができていたのに、なぜか詰まってしまってスムーズに会話ができない。
何がいけないんだろう。

、緊張しとるん?」
「え?」
「いやあ、なんか、昨日までと全然様子ちゃうし。付き合って、緊張しとるんかなー、と」

緊張、ああ、それだ。私は緊張してるんだ。
白石は白石で、私は私。
それは昨日までと変わらないけど、白石と私の関係は変わった。
だから緊張して、何を話せばいいのかわからないんだ。

「白石は、緊張してないの?」
「めっちゃしとるで」
「…見えない」
「テニスの試合前とかもそれよう言われるなー」

あはは、と笑う白石はやっぱり緊張してるように見えない。

「なんや、信じられへん?」
「…うん」

そう言うと白石はわたしの手を取って自分の胸に当てさせた。

「わっ!?」

そんなことされると余計緊張するんですけど!?

「ほら、ドキドキ言っとるやろ?」
「あ…」

その通り、白石は私の心臓と同じくらいの速さで脈打っていた。

「その、なあ」
「は、はい」
「いつも通り、っちゅーわけにはいかんけど、いつもみたいにしてくれたほうがええなあ」
「そう、だね」

にこ、っと笑う白石を見て、私も少し緊張が解けた気がした。

「少しずつ、慣れていけばええんちゃう?」
「…そうだね」

ふふ、と笑うと、白石は「やっと笑った」と言ってくれた。

「あの、私はなかなか慣れないと思うけど」
「うん」
「その、よろしくお願いします」
「こちらこそ」


その後、白石とファミレスへ行って数学を教えてもらった。
やっぱりうまくしゃべれなかったけど、さっきよりずっとちゃんと話はできた。
その夜、白石からメールが来た。
明日も一緒に帰ろうって送られてきたから、うれしいよってメールを返した。
また白石からメールが来て、それを返して、最終的に電話を掛けた。

やっぱりうまくしゃべれなかったけど、さっきよりずっとちゃんと話はできた。
だからきっと、明日はもっとちゃんと話ができるよね。














明日はきっと
10.12.11

君に届けを読んでいて、付き合いたての初々しい感じがいいなあと思ったので。
文章書くの4か月ぶり…