「寒…っ」

秋田はもう雪が降りそうなくらい寒くなってきた。
今まで部活が終わって辰也と一緒に帰る途中、よく寄り道をしていたけど今はもう寒くてそんな気になれない。
だけど、真っ直ぐ帰ってバイバイするのも寂しいから、最近は辰也の部屋でのんびりしている。
今日もそう。

「エアコンつけたよ」
「エアコンは温まるの時間かかるよ…」
「そうなんだよね…」

辰也も寒そうだ。
ずっと暖かいロスにいたんだから当たり前。

辰也の手を両手でぎゅっと握ってみる。

「わ!」
「わ、あったかいね」
「辰也が冷たすぎるんだよ!」

私だって外を歩いてきたんだから手は相当冷たい。
でも辰也の手はそれをも凌駕する冷たさだ。

「あ、でもさ。手が冷たいと心が温かいっていうよね」
「嘘だな」
「即答しなくても…」
「だって、それならオレの手はもっと暖かいよ」

辰也は寂しげに笑ってそう言う。
あ、また。
また、あの顔だ。

たまに見せる、寂しい顔。

私は辰也の手を自分の頬に当てた。
冷たい。

「辰也」

何か、何か言わなくちゃ。

「辰也はあったかいよ。私、辰也といるとあったかい気持ちになるから」


辰也の心が冷たいはずがない。
私は辰也といると、こんなにやさしい気持ちになるのに。
それなのに。
そんなふうに辰也が言うのは、嫌だ。

「辰也は、あったかいよ」

辰也はぎゅっと私を抱きしめる。
ほら、こんなにも、暖かい。

、ありがとう」

辰也は少し目を細める。
さっきと違って、優しい表情だ。

「…うん」
「でも、やっぱり、手が冷たい人の心は温かいって嘘だと思うな」
「そう?」
「うん。だって、の手は温かいけど、といると、オレも暖かい気持ちになるよ」

辰也は優しい表情で笑う。
なんだか、くすぐったい。

「寒くない?」
「あったかいよ」








あたたかい
13.10.16

ヒロインの手が暖かいと言うより氷室の手が冷たいと言うイメージ
氷室手冷たそうです





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