「寒いねぇ…」
「そうやなぁ…」

寒い冬の帰り道。今年が暖冬なんて誰が言ったんだ。
確かに普通より暖かいのかもしれないけど寒いものは寒い。
相対的に寒くても絶対的に寒いのよ。
あー、手袋してくればよかった。マフラー・コート・手袋は冬の三種の神器なのに!

「本当寒いねぇ…」
「そんなに寒い言うなら先帰ればよかったやん」
「それが寒い中彼氏が部活終わるのを待ってた可愛い彼女に言うセリフ?」
「自分で可愛い言うなや」
「何よ、可愛くないっての?」
「可愛いで」

白石は、ははっと笑いながら言う。
何でこういうことを照れずにあっさり言えるんだろう(話振ったのは私だけどさ!)言われるたびに照れてる私の身にもなってくれないかな。
そりゃ、可愛いって言われて嬉しくないわけじゃないけど。
赤くなった顔を隠そうと口までをマフラーに埋めた。

「何やってんねん」
「…寒いの」
「…ふーん」

そう言うと白石は自分のマフラーを取って私のマフラーの上に巻きつけてくる。
つまり二重マフラー状態。

「ちょ、別にいいよ」
「寒いんやろ?」
「人が着てるもの奪うほどじゃないよ!」
「ええから巻いとき。待っててくれた可愛い彼女に対する礼や」

白石は私の頭を撫でて笑った。あ、どうしよう、妙に胸の奥が痛む。

「白石、」
「ん?」
「やっぱマフラー返す」
「ええって」
「いいの。その代わり」
「?」
「手、を繋ぎませんか」

俯きながら右手を出した。手袋をしてなかった手は少し赤くなっていて、白石はその手を取って、私の手の甲にキスをした。

「喜んで」

繋いで手はマフラーより温かくて、少しだけ頬が緩んだ。
























07.02.12