女の子たちの空気が変わる、バレンタインデー。
     私は女友達にあげるくらいで、好きな人にあげたりする気はない。
     だってほら、あげたいと思ったそいつは鞄にたくさんのチョコを詰めている。

     「はチョコくれへんの?」
     「そんだけもらってまだ欲しいの?」

     このバレンタインという日にうっかり白石と日直になってしまった。
     今教室には私と白石、二人だけで日誌を書いている。
     書くのは白石、私はそれを頬杖をついて見てるだけなんだけど。

     二人っきりなんて、何人の女の子が私を恨んでいるのだろう。
     私も普段なら喜ぶところなんだろうけど、今日一緒になりたくなかった。
     だって、こうやって白石のチョコのもらいっぷりを見るのは結構つらいから。

     「そんだけ、って。問題は量より質やろ」
     「質?何よ高級チョコがいいの?」
     「そういうことやなくて。思いが込もってれば安物チョコでもうまいで」
     「じゃあいいじゃない。きっとみんな思いを込めて作ってるわよ」

     さすがモテる人は言うことが違うのね。
     普通の男子はもらえるだけで十分とか言ってるのに。

     量より質、か。
     ああやっぱり作ればよかったかな、と少し後悔したけど、もう遅い。

     「で、からはないん?」
     「そんなにたくさんもらってるんだからいいじゃん」
     「ひどいなぁ。同じクラスのよしみやん」
     「ていうか何でそんなに欲しがるのよ」
     「わからんの?」

     白石はびっくりしたような顔をして、ペンを持つ手を止める。

     「意外と鈍感やなぁ…」
     「え?」

     その言葉に、まさか、と思ったけどすぐにその考えを振り払った。
     いやまさかそんな、ねぇ。

     「何慌ててるん?」
     「、別に、慌ててなんて」
     「多分なぁ、が考えてることで合ってると思うで」


     合ってる、なんて。
     それは、自惚れてもいいということなの?
     どうしよう、顔が赤いかもしれない。

     「で、ないん?」
     「…これでよければ」

     この間から鞄に入れっぱなしのチョコ菓子を一つ取り出して、白石に渡した。
     白石は笑いながら安物やなぁ、と言う。

     「…思いは、たくさん込めておいたけど」
     「じゃあこれはお返しや」
     「え?」


     白石は、ちゅ、と音を立てて私にキスをする。

     「ありがたくいただくで」


     






























    07.02.11

    ヒロインがやけにつんつんしてるのは照れてるから…っておおう伝わりにくい!