今日は10月31日。ハロウィンだ。
先ほど辰也の家に来る途中に通った商店街にも、ハロウィンの商品が多く目についた。
「はい、お菓子」
「ありがと」
ハロウィンだからかぼちゃ味のマフィンを作ってきた。
トリックオアトリート、ではないけど(そもそもお菓子を渡したところで辰也の場合結局食べられるのは私になるし)、ハロウィンと言えばお菓子だろう。
辰也は大きく口を開けてマフィンを食べる。
尖った糸切り歯が見えた。
「辰也は仮装するなら吸血鬼とか似合いそうだね」
辰也の顔をまじまじ見ながら言う。
先ほど通ったお店の中には、仮装グッズを取り扱っているお店もあった。
猫耳だったり、魔女の防止だったり、悪魔の羽だったり。
その中でも辰也なら吸血鬼のマントと牙が似合うだろう。
「そう?」
「うん。なんか日光苦手そうだし」
「そっちか」
「あ、それだけじゃないよ?普通に血吸うの似合いそうって言うか…」
『日光苦手そう』というのは辰也としてはあまりいい響きではないらしく、少しショックそうなので慌ててフォローする。
いや、血吸うの似合うのがフォローかどうかは微妙だけど…。
でも実際似合う。
多分辰也に「血を吸わせてほしい」と言われたら大概の女子は喜んで差し出すんだろう。
「吸血が似合うもちょっと」
「…それもそうだね」
辰也は苦笑する。
確かに吸血鬼っぽいってこと自体が褒めていないか…。だって妖怪系の類なわけだし。
「ひゃっ!?」
辰也、ごめん。そう思っていたらいきなり首筋を舐めてきた。
「え、なに!?」
「いや、血を頂こうかと」
「えっ」
嫌がっていたのかと思ったけど、辰也の顔はノリノリだ。
血を頂くって、これ、何か別のものを頂かれそうな気がしてならない。
「の血はおいしそうだね」
「え、本当にそういう趣味…?」
「が言い始めたんだろう?」
「ん…っ」
今度は首筋に強く吸い付く。
自分では見えないけど、恐らく赤い痕がついているだろう。
「噛み痕」
辰也が先ほどつけた痕をなぞりながらそう言った。
かあっと顔が赤くなった。
「…本当に吸血鬼?」
「かもね」
辰也はクスリと笑う。
その妖しい笑みにドキッとしてしまう。
「…私以外の血は吸わないでね」
辰也になら血を吸われてもいいと思ってしまう。
だけど、私以外のは嫌だ。
本当に吸うわけじゃない。ただの想像でヤキモチなんて、私というやつは。
「専用の吸血鬼だよ」
辰也は笑ってキスをする。
そして先ほどの少し横に痕をつけた。
「はい」
辰也は机の上に置いてあった私の鏡を取ってくれる。
私の首筋には綺麗に並んだ赤い痕が二つ。
本当に吸血鬼に襲われたみたいだ。
「もオレ以外に血をあげちゃだめだよ」
「…うん」
鬱血痕をなぞりながらうなずいた。
私の血は辰也だけのもの。
辰也の牙は私だけのもの。
私だけの牙
14.10.31
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