聖凪に入り、魔法が使えるということになって、生徒の99%が喜んだことだろう。私たちは入学するまで15年間で、魔法なんてものは夢の中のものだと知ったんだから。そんな夢の力が使えれば、そりゃはしゃぎもするだろう。だけど、喜ぶ人がいれば、反対に嫌がる人もいる。たった1%くらいなんだろうけど、私はそんな1%の人間だった。
進学校ということで多少遠くても聖凪に通うことを決めた私にとって、魔法なんて正直どうでもいいものだった。魔法が使えるようになったって学校以外では使えないんだし、卒業時に叶えられる願いだって、私にはない。強いて言えば「この先も大きな不幸もなく暮らしていけますように」とかそんなものだ。魔法で叶えられるとかそういう話ではない。

「君って、随分とリアリストなんだね」
「…大門ならわかってくれるかなと思ったんだけど」

魔法の実力がトップクラスとはいえ、大門も少なからず私に似た考えを持ってるんだと思ったんだけど。

「わからないわけじゃないけど、せっかく”夢の力”を手に入れたんなら、それを磨く努力をしたって損はないと思うけど」
「うーん、その意見もわかるけどさ」

わかるんだけど納得はできない。無駄な努力はないとも言うけど、魔法力の努力をするくらいならもっと有意義なことに対して努力をしたほうがいいんじゃないかとも思う。
それに何と言っても、休み時間ごとに訪れる魔法に関してのトラブルが私には許せないのだ。私はトラブルを起こすようなことはしないけれど(何と言っても魔法を極力使わないようにしているわけだし)、トラブルに巻き込まれることは少なからずある。休み時間くらい、友達とゆっくりおしゃべりしたり、次の授業の予習なり復習なりをしたいのに。

「そんなに言うなら転校すれば?」

大門はぴしゃりとそう言い放った。聖凪よりレベルは落ちるけど、家の近くにも進学校はある。そこにでも転校すれば、今より幾分平和な学校生活が送れるのかもしれない。
確かにそうだけど、そんなことわかってるけど、私がそんなことできないことくらい、大門は知ってるでしょ。

が、僕から離れられればの話だけど」

くすくす、とからかうように言う彼の顔は見ないようにした。見たらもう、目を逸らせない。
離れられれば、なんて、そんなの一生無理に決まってるじゃない。




















08.03.03






大門は常に余裕綽々なんだけど時々ものすごく気弱になればいい、と言いつつこの大門、気弱になってない。