「……この……バカがああああああ!!!」 狭い部屋の中で木霊する私の悲鳴。 冷静に考えればものすごく近所迷惑難だけど、今の私には冷静に考える余裕などなかった。 今日の昼休みのこと。 火神が「勉強を教えて欲しい」と言ってきたのだ。 どうやら今度の中間試験に備えてということらしい。 断る理由なんてどこにもない。 少し時間は遅くなるけど、火神の部活が終わった後勉強を教えることになった。 この時点ではまだ知らなかった。 火神がここまでバカだったなんて…。 「なんで!?あんたこれこの間習ったばっかの公式よ!?わからないならまだわかるけど『見覚えがない』ってどういうこと!?」 火神は帰国子女だから現代文や古典ができないのは覚悟してたけど、理系科目も全滅、それどころか英語まで壊滅的だったとは…。 「わかんねーから教えてくれって頼んでんだよ!」 「それが人にものを頼む態度?」 「…オネガイシマス…」 「とはいえどこから手をつけたらいいものか…」 普通テスト勉強っていったらテスト範囲のおさらいだけど、火神の頭ではそれより前に遡らないと今の範囲の理解なんてできないだろう。 だけどテストまであと1週間を切った今、昔のことをやったところでテスト範囲の復習が間に合うかどうか…。 「…一番勉強しやすい数学からやろう…」 数学はほかの教科と違って問題集が支給されている。 現代文や英語は自分で学習法を見つけなくちゃいけないけど、数学ならこの問題集をやっていけば最初の「勉強方法を見つける」といったことをしなくて済む。 「とりあえず、ここから順番にやってって。わかんなかったら解答の解説見て。それでもわかんなかったら聞いて」 「おい、投げやりかよ!」 「あんたがそれ解いてる間にまとめノート作ってあげるから!グダグダ言わずにやる!」 そう言うと火神は大きな体を小さく丸めて問題集とにらめっこをし始めた。 まず、簡単にまとめられる日本史からやるか…。 ふと、自分のテスト勉強の心配をしてみたけど、人に教えることで自分の理解も深まるっていうし、大丈夫だと言い聞かせた。 ……… あれから30分くらい経っただろうか。 火神のほうに視線を向けると、そこには何も書かれていない問題集。 私の怒りは頂点に達した。 「……かーがーみーくーん?」 そう言って火神の肩ががっしりつかむ。 火神は面食らったような顔をしてシャーペンを落とした。 「うおっ…な、なんでいきなり君付けなんだよ…」 「わからなかったら解説を見ろ、それでもわからなかったら聞けって言ったよね?なんで何にも進んでないのかな?」 「あー…いや、これは、その」 「何?言い訳くらいは聞いてあげるわよ?」 火神は少し罰の悪そうな顔で言った。 「まずさ、お前と勉強しようってのが間違いだったんだよ」 「は!?」 どんな言い訳が飛んでくるのかと思ったら、何を言い出すんだこいつは。 怒りじゃなくて悲しみがわいてくるぞその発言。 一発殴ってやろうかと拳を握りしめた直後、 「惚れた女と二人っきりで、勉強に集中とかできるわけねーだろ」 握った拳を下した。 「あんたって…」 「?なんだよ?」 「いや、なんだかんだでアメリカ育ちよねーって」 「はあ?」 「そういうこと、普通さらっとは言えないって、絶対」 そんなこと言わなそうに見えてときどきサラッと言ってくるから困るんだ。 「はーあ…私も勉強する気なくなっちゃった」 「だろ、そりゃそうだろ」 そのまま火神は私を引き寄せるとキスをした。 今回成績落ちたら火神に八つ当たりしてやろう、そう心の中で誓った。 11.11.05 黒子アニメ化おめでとう企画 神理さんリクエスト/火神でいちゃいちゃでした リクエストありがとうございました! |